とかち国際現代アート展「デメーテル」

HAPPENINGText: Sachiko Kurashina

2日間の取材中、1日目に競馬場内で見ることができた巨大な白い円盤は、火薬を用いた大規模プロジェクトで知られている中国人アーティスト、蔡國強の作品「帯広のためのプロジェクト 天空にあるUFOと社」である。直径30×10メートルのUFO型飛行船は、異色の存在感を放っており、私は実際には見ることが出来なかったが、UFOは社とつながれており、UFOが上昇すると社も中空に引き上げられる。


Project for Obihiro: Sky Bound UFO and Shrine, Cai Guo Qiang (China)

2日目、広大な競馬場の片隅にある社の前でしばらく一人でじっとしていると、なんだか神聖な気分。社もこのイベントを静かに見守っているかのような佇まいだ。その社の前に掘られた四角い穴の中には、小さな鳥居があった。穴と鳥居は何を意味しているのだろうか。UFOが大きく膨らみ、鳥居が宙に浮かぶ姿が実際に目の前にあると、きっと景色も変わるだろう。


Project for Obihiro: Sky Bound UFO and Shrine, Cai Guo Qiang (China)

厩舎では、このプロジェクトの火薬画ドローイングと制作ビデオが展示されていた。火薬画というのを初めて見たからか、 奥にひっそりとあるこの作品には、すーっと引き付けられるものがあった。焦げきって向こうの壁まで見えている部分、焼ききれられず微妙なグラデーションを付けた部分。それらをじっと見ていると、子供の頃、夜眠れずに見つめていた天井のように、模様が人の顔に見えたり、鳥に見えたりしてきた。火薬という、完璧には予想が付かない展開を見据えた、偶然が生み出した作品とも言えるだろう。


Project for Obihiro: Sky Bound UFO and Shrine, Cai Guo Qiang (China)

このUFOを浮上させるプロジェクトは、先日の台風でバルーンの構造体が破損した為、安全面における配慮から、残念ながら中止される事が決定されたが、8月11日(日)午後6時30分から、直径30メートルの円盤に約3,000メートルの導火線を取り付けて、史上最大の火薬画を描くパフォーマンスが行われる事になった。火花が飛び散る中、一瞬にしてUFOと社を題材にした、壮大な火薬画が描かれる様子を是非体験してほしい。

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