タピオ・ヴィルカラ — 世界の果て
HAPPENINGText: Alma Reyes
フィンランドは、洗練されたシンプルさと天然素材の徹底的な活用を特徴とする、卓越したハンドクラフトデザインで常に高い評価を得てきた。中でもタピオ・ヴィルカラは、1940年代後半から1950年代にかけてのフィンランドのモダンデザイン、特にガラス工芸において前例のない遺産を築いた。イッタラが高品質で美しいデザインの食器でスタイリッシュな名を確立している日本では、ヴィルカラの独創的な作品は人気を誇っている。
タピオ・ヴィルカラ、1980年代 © Maaria Wirkkala. Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art
生誕110年、没後40年の節目に、東京ステーションギャラリーで6月15日まで、ヴィルカラの国内初の回顧展「タピオ・ヴィルカラ — 世界の果て」が開催されている。本展では、フィンランドのエスポー近代美術館、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団およびコレクション・カッコネンから厳選したプロダクトやオブジェ約300点に加え、写真やドローイング(複写)が展示される。
ヘルシンキで育ったヴィルカラは、ラップランド、エスポー、ヴェニスなど、さまざまな場所で作品を制作するうちに、それらの風景からインスピレーションを得るようになった。そのような豊かな基盤は、ガラス以外にも、磁器、木、プラスチック、アルミニウム、カトラリー、パッケージデザイン、イラストレーション、照明、紙幣、切手など幅広いジャンルを追求する原動力となっただけでなく、伝統的なものから抽象的なもの、キノコ、鳥や動物、季節、葉、貝殻、神話、有機的な生命の要素など、無数のテーマも生み出した。
タピオ・ヴィルカラ、ヘルシンキのオフィスの扉、1950年代後半 Private collection. © Ari Karttunen / EMMA
鋭敏な質感の表現は、最初の部屋にある、ヴィルカラのヘルシンキのスタジオのためにデザインされた、木のブロックで作られたオフィスの扉(1950年代後半)に見られる。ブロックはランダムに積み重ねられ、キネティック・アートのようなダイナミックな動きを誘発し、デザイナーの遊び心が表れている。扉を閉めると、ひとつの彫刻作品のように立ち上がる。
彫刻家・墓地の設計士の父と木彫家やテキスタイル制作していた母のもとで育ったヴィルカラは、芸術への情熱を生まれながらにして身につけた。1940年代後半から1950年代にかけて、イッタラ社主催のデザインコンペでの優勝やミラノ・トリエンナーレのグランプリ受賞によって一気に脚光を浴びた。この足がかりが、必然的な成功への道を切り開いた。
「素材のすべてを知る」と題された章では、グラス、カップ、花瓶、ボトル、皿、コーヒー/ティーポット、カトラリーなど、さまざまな素材を使ったヴィルカラの驚くべきコレクションが展示されており、フォルムや色彩における彼の独創的な創造性を証明している。『どんな素材にも不文律があり、デザイナーの目的はその素材と調和することである』と彼は語っている。
タピオ・ヴィルカラ《カルティオヤルカ》1956年 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. © Lilja Oey / EMMA
ヴィルカラがフィンランドのガラス製造275周年を記念してデザインした作品、フィンランド語で「円錐の脚」を意味する《カルティオヤルカ》(1956年)は、ボウルの部分は球体の上部を切り取ったように、そして脚部は円錐をひっくり返した形となっている。
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