アートフェア札幌 2015
HAPPENINGText: Ayumi Yakura
国内外で活躍するギャラリストが集結し、選りすぐりの現代アート作品を販売する「アートフェア札幌2015」が、去る11月22日、23日、クロスホテル札幌にて開催された。北海道初開催から第3回目となる今年は、新規出展6軒を含めた国内外12都市、全20軒のギャラリーが出展。驚いたことに総売上は前年比240%を記録した。
1407号室 eitoeiko(東京) Photo: Erika Kusumi
今年のフェアを象徴するポスターのメインビジュアルに選ばれた作品は、エイトエイコより出品された岡本光博の「SUHAMA Recycling Kills the Copyright」(州浜リサイクリング・キルズ・コピーライト)。リサイクル品の「がま口」を集めて吊り下げた作品は、一見どれもディズニー社が著作権管理するミッキー&ミニーマウスの顔に見えるが、比べると一つひとつの顔が随分と異なっていてニヤリと笑ってしまう。そして、ふとニュースで話題の社会問題を連想したりもする。現代アートは「社会を映し出す鏡」だ。特にアートフェアには、時代、社会、そして自己を見つめる繊細な感性と、それを発想豊かに表現するタフなクリエイティビティが際立つアーティストの作品がずらりと並ぶ。
1305室 YODギャラリー(大阪) Photo: Erika Kusumi
後半で詳しく紹介するが、今年の出展作品は、斬新な趣向の刺繍作品や、漆の深みに心奪われる抽象作品など、質感に魅力があり「実物を見に来て良かった!」と思える作品が多かった印象だ。ギャラリスト達が発掘した90年代生まれのアーティストのレベルの高さも特筆すべき点だろう。さらに、今年から東京3軒と札幌1軒に加え、名古屋、函館の2都市のギャラリーも加わり、旅するようにホテル客室を巡る中で、それぞれの土地で生まれたアーティストの作品に出会えたのはもちろん、いくつかのギャラリーから北海道出身アーティストの作品が「里帰り出品」していたことも来場者を喜ばせた。
ニューシティアートフェア台北 2015, アートフェア札幌 2015×クロスホテル札幌 出展ブース Photo: Taketo Oguchi
「アートフェア札幌」を開催する目的は、国内外で注目されている現代アート作品を札幌で見て、知って、買える機会を設けることにより、札幌のアートマーケットを開拓して、地域文化として根付く土壌を育てることだ。それと同時に海外へも視野を広げ、地域の枠を超えて種を蒔くため、開催直前の11月12日から4日間は「ニューシティアートフェア台北 2015」へ出展するなど、北海道アートを海外で紹介する活動が今年も行われた。また、12月には毎年、凱旋展「クリエイティブ北海道展」をクロスホテル札幌にて開催し、地元北海道へ向けて北海道アートの魅力を紹介している。
しかし、現代アートは「よく分からないから」と敬遠される事も多いのが現状だ。普段アートに馴染みのない人にもまずは興味を持って楽しんでもらうため、今年も様々なイベントや特別展示が同時開催された。
[アートフェア札幌 2015 特別展示] 爪楊枝アート「ベートーベンの肖像画」, Photo: Erika Kusumi
フェアの受付がある2階ロビーを訪れた来場者をまず驚かせたのは、札幌市立啓明中学校1年7組の生徒全員が力を合わせ、10万572本もの爪楊枝を用いてベートーベンの肖像を作りだした巨大な「爪楊枝アート」だ。当初は「ディスティニー」(運命)をテーマとした学校の文化祭の為に作られた作品で、国際的なアートフェアで展示されるとは想像もしていなかったというが、一目見るだけで人の心を動かす、サイズ以上に大きな価値を持ったアート作品であり、鑑賞を目的に訪れた来場者のみならず、一般の宿泊客も感心の眼差しを向けている様子だった。
[アートフェア札幌 2015 特別企画] ウェアラブル芸人 Photo: Kanako Miura
同じくロビーには、現代の新しいメディアアートとして、遠隔地にいるお笑い芸人とユーザーをつなぐカツラ型デバイス「ウェアラブル芸人」が特別展示された。ユーザーが頭に被ると、カツラに内蔵された小型カメラやマイク、イヤホンを通じてお笑い芸人からリアルタイムにアドバイスを受けられて、シチュエーションに合わせて場を盛り上げることができる。これは日本社会に元気を与えるため、笑いのプロであるよしもとクリエイティブ・エージェンシーがスパイスボックスと共同開発したもの。初日限定で実演パフォーマンスと特別体験も行われ、参加者の驚きと笑いを誘っていた。
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