アートフェア札幌 2015
HAPPENINGText: Ayumi Yakura
東京からは前述の新規3軒に加え、例年人気を集める4ギャラリーが出展していた。
1405号室 hpgrp GALLERY TOKYO/NEW YORK(東京・ニューヨーク) Photo: Erika Kusumi
hpgrp GALLERY TOKYO/NEW YORKは、アートフェア札幌でも毎年、様々な表現方法で独自の世界を創り出す作家を新しく紹介している。宮田彩加の「WARP A -ワニーバック-」は、ミシンを制御するコンビューターにあえて一部エラーを発生させることで独自の表現方法を獲得した斬新な刺繍作品だ。一方でベッドの上には、手刺繍により「パート」や「世帯主」など現代社会特有の肩書きを文字と装飾で表現したクラークソン瑠璃のやや辛辣でユニークな作品が並んでいた。刺繍作品の他にも様々な技法による作品が絶妙にコーディネートされており、販売を目的としたフェアに相応しくありながら、企画グループ展のように鑑賞を楽しめる一室だった。
1403号室 マキイマサルファインアーツ(東京) Photo: Erika Kusumi
コマーシャルギャラリーの所属・取扱作家による人気作品や新作展開を札幌で見られることもアートフェアの魅力の一つであり、それを楽しみに訪れる来場者も多い。東京のマキイマサルファインアーツからは、昨年も話題となった、日本画に使用される岩絵具などの美しい発色を生かして動物園とシロクマを描いた米山幸助の作品「気候変動」が再登場。北海道出身の小林俊哉による「取り返しのつかないものを取り戻すために」シリーズは、昨年開催された同ホテル2階の個展では黒い背景の作品が展示されていたが、今回は四季を感じる明るい色を背景に植物のフォルムを描いた作品が室内を彩っていた。
1404号室 AI KOWADA GALLERY(東京) Photo: Erika Kusumi
アイコワダ・ギャラリーは、東京と上海にスペースを有して、国内外のアートフェアへも積極的に出展しているギャラリー。壁を使用したミニマルな展示で、12月23日まで東京オペラシティアートギャラリーにて個展開催中の鈴木星亜による水面の一瞬を描写したような絵画のグリーンと、福原寛重がモノクロームで撮影した大自然の美しい黒が、ナチュラルカラーの内装の中で際立ちながら調和していて、自宅にアートを取り入れた暮らしの豊かさを想像しながら、作品を丁寧に鑑賞したくなるような空間だった。
1406号室 EINSTEIN STUDIO(東京) Photo: Erika Kusumi
東京のアインシュタイン・スタジオは、「日本の若手写真家を世界へ」をスローガンに、写真の展示企画やオンライン販売、ジャパン・フォト・アワードなどのコンペティションを行っている団体で、今年は大塚和也の「オブジェ」や、中村健太の「シュライン」など、若手写真家による作品が多数紹介されていた。また、箱に入れられた写真作品を、音楽レコードを探すように気軽に購入できるボックスが今年も人気を集めていた。
続いて、海外から出展の3ギャラリーを紹介する。
1410号室 office339(上海) Photo: Erika Kusumi
上海のオフィス339は、アジアを軸にネットワークを広げ、上海を拠点として現代アートを扱うアートマネージメント会社。今年は様々な物語を想像させるシチュエーションにいる人物を俯瞰で描く、アートオークションでは高額で落札される人気の作家、石金玲による油彩画「パフォーマー」、「トレイナー」などに焦点を当てて個展形式で紹介していた。
1412号室 ギャラリー・グラン・シエクル(台北) Photo: Erika Kusumi
台北のギャラリー・グラン・シエクルは台湾の現代美術、特に新しいメディアアートを世界の美術市場へ紹介しているギャラリーだ。昨年のフェアでポスターのメインビジュアルにもなったス・ツーハンの透明な箱庭のような立体造形が光り、幾何学的な面を貼り重ねるように風景を構成した平面の新作なども紹介された。
1411号室 リソウル・ギャラリー(ソウル) Photo: Erika Kusumi
ソウルのリソウル・ギャラリーは、毎年様々な韓国の現代アーティストを日本へ紹介してくれる。入り口付近には八角形のキャンバスに菱形をパッチワークするように描かれたキム・ジュンアのアクリル画「イン・マイ・ハート」や、セオ・インキュンによる薄暗い空を飛ぶトンボの羽の絵画と、作品から外して装飾品として身につけることもできる壁掛けの立体作品が並んだ他、ベッドにはハン・イジンの心象風景画「マイ・フォレスト」など、様々な画風による多色使いの美しい作品が展示されていた。
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