アートフェア札幌 2015

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

13階には、東京以外の地方都市を拠点として活躍するギャラリーが集結した。古くからの日本文化が息づく京都で、新世代の作家を発掘し育てながら、社会文化としての美術を通じて異国との交流を深めてきた同時代ギャラリーからは、伝統の工芸技術を生かした新しい表現の作品が多数出品されていた。

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1304号室 同時代ギャラリー(京都) Photo: Erika Kusumi

佐々木友恵佐々木萌水の作品は、共に漆を用いた抽象的な表現でありながら、それぞれの美しさは異質のものだった。壁に飾られた齊藤文護の「熊野 星」は、星が瞬く闇夜に染まった森を描いた風景画に見えるが、現実の風景を撮影した写真作品であり、現物を目にするとますます現実とは思えないほどの神聖な美しさだった。

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1305室 YODギャラリー(大阪) Photo: Erika Kusumi

芸術表現がグローバル化の傾向にある今、全世界に共通する価値観を国内外の作家・作品の思想から見いだして紹介する大阪のYODギャラリーは、全体的に見ると白や赤を基調とした作品ですっきりとした印象を受けたが、一つひとつの作品に見応えがあり、北海道出身で大阪育ちの服部正志による、ヒト型のモチーフを重ねて感謝の気持ちを表現する立体造形シリーズ8作目の「Hana Hito「1○○masu」」や、金や朱色など雅な色彩をモダンに用いた小川宣之の陶磁器作品など、日本の良い価値観を再認識できる、本当の意味で国際的な作品が並んでいた。

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1306号室 ギャラリー点(金沢) Photo: Erika Kusumi

金沢のギャラリー点は、地域に根付く工芸の流れより、高度な伝統技術と美しい表現を得意とするアーティストの作品を取り扱い、国内外へ広く紹介しているギャラリーだ。ベッドには小曽川瑠那による儚げなガラスの花びらや、笹川健一による壊れたような造形に美を留めた器、そして札幌の丹羽シゲユキが削りだした植物の生命感を感じさせる白色の磁器「華冠」(かかん)など、非日常的な工芸作品が宝石のように並んでいた。壁には墨を用いた金田和子作品の黒と、寺脇扶美作品の白が穏やかなコントラストをみせる中で、北海道出身の菊谷達史が描いた「富士山」も小作品ながら印象的で、フェアを機に他の作品も見てみたいと感じさせた。

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1307号室 ギャラリー水無月(岐阜) Photo: Erika Kusumi

岐阜のギャラリー水無月は、作品のジャンルは様々でもしっかりと手の入った作品を中心に取り扱い、各地のアートフェアへも多数出展しているギャラリー。入り口正面では、動物を不思議なモチーフと組み合わせて静物画のように描く奥村晃史の「紙上の羊」が出迎えた。ベッドの上では、現代的な衣装を纏った羽鳥聖子による磁器の球体関節人形の美少女たちが思い思いのポーズで過ごしていた。遠くから見ると抽象画のように見えた飯沼由貴の油彩画「まるまる」は、近寄って見ると丸まって眠る何匹もの三毛猫が画面いっぱいに密集しており、毛並みまで写実的に描き込まれていた。

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