アートフェア札幌 2014

HAPPENINGText: Hanae Kawai

そして、現代アートを鑑賞する上でもっとも大事なことは、作家や作品のメッセージを汲み取ること。現代のアートでは美しさや巧さだけではなく、メッセージやコンセプトの重要性がますます高まっている。

アートフェア札幌 2014
1405号室 マキイマサル・ファイン・アーツ(東京)

今回出展したマキイマサル・ファイン・アーツ(東京)では大河ドラマ「軍師官兵衛」の題字を描いた書道家の祥洲の作品や人気上昇中の小林俊哉の作品が注目を集める一方、米山幸助の日本画が、描かれた動物園のシロクマが可愛いととりわけ来場者から評判だった。水の中を楽しそうに泳ぐシロクマの姿は穏やかで観る人を癒してくれる。しかし、タイトルをみると誰もがどきっとする。この絵のタイトルは、「climate change(気候変動)」。シロクマが泳ぐこの水は、温暖化によってできたものとも考えられる。この絵にはそうした風刺的メッセージがひっそりと隠れているのだ。このように、作家の伝えたいメッセージを受け取ることができると、わたしたちはますますその絵に惹きつけられる。

アートフェア札幌 2014
1409号室 hpgrp GALLERY TOKYO(東京・ニューヨーク)

もちろん、全ての作品のメッセージがわかりやすいわけではない。今回の例で言えば、技法・視覚効果・コンセプト、様々な面で質の高い写真家・大和田良などの作品を多数展示した hpgrp GALLERY TOKYO(東京・ニューヨーク)の上野友幸の作品は、一見デザイン性が重視されたスタイリッシュな平面作品にみえるが、実は聞かねばわからぬ重要なメッセージが詰まっている。世界の国歌を英語で書き直し重ねられ、ところどころ「love(愛)」や「parents(両親)」「sister(姉妹)」などといった文字だけはっきりプリントされている。これは、戦争を唱う国歌の歌詞から、作者はあえて「家族」に関わる単語を抜き出しているのだ。戦争の厳しさや国々の過ちと、それと対照的な家族の愛を物語っていると思われる。わからないこと、興味をもった点については、躊躇せずギャラリストに聞いてもらいたい。皆説明したくて、作品の良さを分かち合いたくてうずうずしているのだ。

アートフェア札幌 2014
1303号室 ギャラリー アウト・オブ・プレイス(奈良・東京)

また、コンセプトだけでなく、その作品の制作過程なども聞いてみるといい。 ギャラリー アウト・オブ・プレイス(奈良・東京)では多くの写真作品が展示されたが、中でもとりわけ坂田峰男のモノトーンな写真たちは注目を集めた。黒い背景上に白い植物がぼんやりと、または箇所によってははっきりと映し出されている。これらはフォトグラムという技法を使うことによってできるもので、普通の写真のように複数製作が不可能な、瞬間そのものを捉えた作品なのだ。作家の努力やスタイルを知ることで、その作品がどんどん愛おしく感じてくるはずだ。このようなギャラリストたちとの会話も、アートフェアの魅力の一つである。

アートフェア札幌 2014
1404号室 AI KOWADA GALLERY(東京・上海)

そして、せっかく方々からギャラリーが集まるのだから、普段なかなか触れられないタイプのアートにも注目してほしい。とくに近年は、アジアのアートマーケットの発展は著しい。今回出展した AI KOWADA GALLERY(東京・上海)は作家としてデザイナーとして活躍する福原寛重の作品を展示。日本でのアーティストにスポットをあてる一方、アジア圏にも進出している。

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