ミュンスター彫刻プロジェクト 2007

HAPPENINGText: Kana Sunayama

今年2007年の最大の現代アートイベントといえばもちろん、「The Grand Tour」と銘打たれ、世界中の現代アート関係者、またアートラヴァーが押し寄せている、2年に一度のヴェネツィア・ビエンナーレ、5年に一度のドクメンタ12、そして10年に一度のミュンスター彫刻プロジェクト07のトライアングルだ。Square Depression

このトライアングルの中で最も周期の長いミュンスター彫刻プロジェクトは、1977年にクラウス・ブスマンによって、20世紀における彫刻のフォルムと意義に焦点をあて、アートと大衆、そして屋外の公共スペースの関係を問い、パブリックアートのコンセプト、意味合い、発展、最新の傾向について議論し、そして将来の在り方を予想する場としての国際展として第一回が開催された。

Munster Skulptur Projekte 07
Andreas Siekmann, Trickle down. Public Space in the Era of its Privatization

前三回に設置された作品は現在ミュンスターの街に39点残っており、ドナルド・ジャッド、クレス・オルデンバーグ、ダニエル・ビュレン、ダン・グラハム、ジェニー・ホルツァー、レベッカ・ホルン、フランソワ・モルレー、ジュゼッペ・ペノーネ、リチャード・タトル、リチャード・セラなどの、現在も世界を代表する現代アーティストたちの作品に触れることができる。また今年のプロジェクトのために依頼を受けた現代アーティストは36名を数える。

Switch+
新しい試みとして、彫刻プロジェクト開催期間だけ設置された建物「Switch+」

ここでは、今年制作された36名のアーティストたちの作品のなかから、いくつかを紹介する。

まずはやはり、アートフォーラムとフリーズ・マガジンという、世界の現代美術誌をリードする二大雑誌の「The Grand Tour」特集で、ヴェネツィア・ビエンナーレ、ドクメンタ、ミュンスターに展示されている数え切れないほどの作品たちを相手に堂々の表紙を飾り、その美しさを見せ付けたブルース・ナウマンの「Square Depression」。

Square Depression
Bruce Nauman, Square Depression

この作品は1977年度の第一回ミュンスター彫刻プロジェクトの際に、ナウマンが提案したものであったが、当時の政府建築当局から許可が下りず、今回30年の月日を経て、制作されることとなった。

25x25mの正方形の地面に頂点が地面から2.3m低位置に設定された、ピラミッドを逆さにした形の穴が掘られ、その側面は真っ白のコンクリートで固められている。緑に囲まれた科学大学の敷地にぽっかりと開いた白い穴。その白だけしか視野に入らない状態でピラミッドの先まで歩き進んでいき、頂点の地点でふと目を上げると、真っ青の空。自身の目線よりすこし上に位置する地面はまるで地平線を描いているようだ。

周りには同じように目を上げて空を見ている人、ピラミッドの頂点を目指して地面の白に目を奪われている人。まったく同じ体験を同じ場所で同じ時にしているはずであるのに、個々の体験は個々の体験でしかない。公共スペースで多くの人に囲まれながらも、こんなにも自分と向き合うアートに出会ったのは初めてだった。

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