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柚木沙弥郎 永遠のいま

HAPPENINGText: Alma Reyes

型染かたぞめは、もち米の糊を防染剤として布に模様を施す日本の伝統的な染色技術の一種で、奈良時代に大陸から日本に伝えられたといわれ、平安時代から鎌倉時代を経て江戸時代に武家や庶民の間で大流行した。今日、型染の布は、衣服だけでなく、風呂敷、壁掛け、キルト、テーブルランナー、その他の小物といった家庭用品にも活用されている。特に型染と注染ちゅうせんに取り組んだ、国内で名高いテキスタイル・アーティストの一人に柚木沙弥郎ゆのき さみろう(1922〜2024年)がいる。柚木の色彩とパターンの目を見張るような鮮やかさは、現代の民藝のジャンルにおいて重要な表現となり、日本の版画、コラージュの発展にも強い影響を与えた。


柚木沙弥郎 永遠のいま 展示風景 撮影:Alma Reyes

東京オペラシティアートギャラリーは、12月21日まで「柚木沙弥郎 永遠のいま」展を開催している。本展は、75年にわたる柚木の仕事を振り返るとともに、創作活動の元となる国内外での旅路も巡ることができる包括的な回顧展となっている。


柚木沙弥郎 左:《無題2019-2》2019年 個人蔵 / 中:《型染布「2016」》2016年 日本民藝館蔵 撮影:村林千賀子 / 右:《Memory》2019年 IDÉE蔵 撮影:乾剛

若き柚木沙弥郎にとって、美術の世界は馴染み深いものであった。父が洋画家、祖父が日本画家という芸術家一家に生まれた彼は、東京帝国大学(現:東京大学)で美術史を学んだ後、岡山県倉敷市にある大原美術館に職を得た。ここで柚木は、柳宗悦やなぎ むねよしらの提唱する「民藝」の思想や、型染の名匠、芹沢銈介せりざわ けいすけの型染カレンダーに出会う。芹沢のもとで染色の基礎を学んだ後、染色された型染に柚木は強く魅了され、やがて創作の焦点を当てるようになった。それと同時に現代の生活様式に合う西洋的な趣も取り入れようとした。


柚木沙弥郎《紅型風型染布》(部分) 1948年 日本民藝館蔵 撮影:村林千賀子

柚木の初期の作品《紅型風型染布》(1948年)は柳から贈られたもので、現在日本民藝館の主要なコレクションの一部となっている。複雑な花びらと葉は、優雅な様式でリズミカルに流れている。1949年、日本の工芸美術の展覧会である国画会展覧会(国展)に作品を出品。1955年、東京・銀座のギャラリー・たくみで初個展を開催して以来、柚木は絵本の原画や立体作品、版画などにも表現の幅を広げていった。その後1958年には、ブリュッセル万博で発表した《型染壁紙》で銅賞を受賞している。

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