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ミュンスター彫刻プロジェクト 2007

HAPPENINGText: Kana Sunayama

もう一点はマイケル・エルムグリーン&インガー・ドラッグセットという二人組みの「Drama Queens」。

こちらもガイ・ベンナーと同様に、20世紀美術史をビデオという媒体を用いて面白おかしくアレンジした作品である。ここに登場する彫刻はミニマル、ポップ、ポストモダンまで20世紀彫刻史のスーパースター作品7点。

彼ら(ここでは「彼ら」と呼ぶことにする。なぜなら彼らは動き、話し、文句を言えば冗談も言うし、音楽にあわせて踊りもする。)は普段置かれている「美術館」という場所のコンテクストから引きずり出され、ミュンスター市立劇場の舞台の上にいる。


Michael Elmgreen & Ingar Dragset, Drama Queens

ウルリッヒ・リュックリームの「Untitled(granite)」は、下手なドイツ語交じりの英語で話し、あまりみんなの会話についていかず、ジャン・アルプの「Cloud Shepherd」は知識人でみんなの質問にひとつひとつ明確に答えていく。アルベルト・ジャコメッティの「Walking Man」が別の美術館に貸し出しに出されることに文句を言い、真っ暗で話し相手もいなく孤独な保管所に置かれることが一番嫌いでそんなのは普通の人生じゃないと言えば、ソル・ルウィットの「Four Cubes」は静かに、自分も同じ目にあっていると同意するが、保管所の絶え間なく響く保存設備の音のせいで眠ることができないと言う。


Michael Elmgreen & Ingar Dragset, Drama Queens

ジェフ・クーンズの「Rabbit」はいつも浮かれていて最近の流行に精通しており、ビージーズのナイト・フィーヴァーで踊りたがる。バーバラ・ヘップワースの「Elegy III」は「Four Cubes」とそんな銀色に光るウサギが嫌いだという点で話が合う。しかしそんな「Rabbit」も銀行、ギャラリスト、投資家、アートブックの編集者たちの間で大変な目にあっていると嘆く。そして最後に、アンディ・ウォーホルの「Brillo Box」が舞台の上から落ちてくるという設定だ。

20世紀美術史書にいつも写真が掲載されていて身近に感じるような彫刻たちによって軽快に進められていく会話の中にも、それぞれの彫刻が制作された時代背景やコンセプト、また芸術作品を取り巻くアート界のあり方の変遷などの情報がふんだんにちりばめられている作品である。

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