テート美術館 - YBA & BEYOND 世界を変えた90S 英国アート
HAPPENINGText: Alma Reyes
1980年代後半から2000年代初頭にかけての英国は、政治、経済、文化の各分野における急進的な変化に突き動かされ、激動の時代を迎えていた。90年代前半には深刻な不況に陥ったが、インターネットや携帯電話の普及とともに徐々に回復へと向かった。90年代中盤から後半にかけて現れた「クール・ブリタニア」という現象は、英国のファッション、音楽、アートに活気あふれるエネルギーをもたらした。
この時期に頭角を現した新進クリエイターの波、ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)は、従来の表現のルールを打ち破り、ミクストメディアや新たな技法を用いて現代アートにおける独創的な概念を果敢に打ち出した。大衆文化や個人的な物語を創作のテーマとした彼らの作品は、現代美術のあらゆる側面と、それが社会の複雑性に与える影響を問い直し、時に衝撃をもたらし、議論を巻き起こした。その大胆で挑戦的な姿勢は、自由な創造性を重んじる次世代の礎となり、2000年のテート・モダン開館へとつながったのである。
国立新美術館で、5月11日まで「テート美術館 - YBA & BEYOND 世界を変えた90s 英国アート」が開催されている。本展は、当時英国で活動していた58組の若手アーティストや国際的に著名な作家による、絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなど、多岐にわたるメディアの作品約100点を集めた大規模な展覧会だ。各章では「スポットライト」として、特定のアーティストの映像作品に焦点が当てられている。展覧会のテーマは、文化的・ジェンダー的アイデンティティ、公衆衛生、人種間暴力、社会の進化、そして都市環境を巡るものとなっている。
序章「フランシス・ベーコンからブリットポップへ」には、著名な画家フランシス・ベーコンによる巨大な3連パネル作品《1944年のトリプティク(三幅対)の第2ヴァージョン》(1988年)が展示されている。深紅の背景に描かれた3つの人物像から漂う怒りと残酷さという生の感情は、東西冷戦下で若きアーティストたちが耐え忍んだ極限の苦悩を物語っている。

ダミアン・ハースト《後天的な回避不能》1991年 Photographed by Prudence Cuming Associates © Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved, DACS/Artimage 2026, Tate Collection
第1章「ブロークン・イングリッシュ:ニュージェネレーションの登場」のホール中央には、今日の世界で最も重要なアーティストの一人、ダミアン・ハーストによるガラスとスチールで囲まれた巨大なインスタレーションがある。《後天的な回避不能》(1991年)は、ガラス箱の中に閉じ込められたオフィス風景を描写したものだ。デスクの上に置かれたタバコ、灰皿、ライターは死や窒息の隠喩であり、逃れられない循環の中で空回りする労働者を暗示している。見る者は、社会的重圧にさらされる日常の脆さ、人間存在の儚さという現実に直面する。この作品は、YBAムーブメントの火付け役となった1991年のロンドンでの展覧会「ブロークン・イングリッシュ」で発表されたものだ。

ギルバート&ジョージ《裸の目》1994年 Photo: Tate © Gilbert & George, Tate Collection
隣の部屋には、ギルバート&ジョージによる挑発的な作品《裸の目》(1994年)がある。27枚の写真を組み合わせた6メートルを超えるこの大作は、「eye(目)」と「I(私)」のかけ言葉になっている。二人のアーティストは全裸で顔を覆い、彼らの顔のアップが背景全体を占める構成となっている。60年代から活動を続ける彼らは、1980年代後半から90年代のAIDS危機の最盛期において、セクシュアリティを巡る政治性に真っ向から対峙した。

ルベイナ・ヒミド《二人の間で私の心はバランスをとる》1991年 Photo: Tate © Lubaina Himid, Courtesy Hollybush Gardens and Greene Naftali, Tate Collection
本展で取り上げるテーマの一つには、カリブ海、南アジア、アフリカにルーツを持つクリエイターたちの統合がある。ザンジバル(旧英国保護領)で生まれ、生後すぐに英国へ移住したルベイナ・ヒミドは、英国美術に多大な貢献をしてきた。彼女は今年、2026年のヴェネチア・ビエンナーレで英国代表を務める。色彩豊かで鮮やかな《二人の間で私の心はバランスをとる》(1991年)には、ヨーロッパの白人男性が航海で用いた地図の山を捨て去った、二人の黒人女性移民が描かれている。このメッセージは、白人男性が支配的であった航海知識やナビゲーションシステムへの反旗を翻すものだ。
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