ミュンスター彫刻プロジェクト 2007

HAPPENINGText: Kana Sunayama

マイケル・エルムグリーン&インガー・ドラッグセットのビデオ作品は美術館という場所から作品を取り出して別のコンテクストに置くという試みであったが、美術館という施設をテーマにした作品としてトーマス・シュッテの「Model for a Museum」があった。


Thomas Schütte, Model for a Museum

作品は元から存在していた噴水を取り囲む透明のプレキシガラス、中間のコンクリートブロック、そして高々と聳え立つオレンジ色のプレキシガラスから成り立っている。タイトルから想像してオレンジ色の部分は美術館だろう。

そんな美術館の部分はまるでピラミッドのように、崇められるように、私たちの手に届かないところにそびえたっている。このミュンスター彫刻プロジェクトは、すでに言及しているように、パブリックアートの象徴のような存在の企画。街中のいたるところに現代アートが設置され、展示され、人々の生活に溶け込むことを目的としているプロジェクトである。


Thomas Schütte, Model for a Museum (Detail)

そんなミュンスターの街に、「人間の文明の倉庫とも言える美術館の、しかし手を伸ばしても届かないモデル」をシュッテは制作した。そしてその建物模型の中は空っぽである。2006年のベルリンビエンナーレでのシュッテの作品、三体の巨大人形も中身は空っぽだった。また、シュッテの建築物模型シリーズの作品につきものの小さい「働く人間」の人形は、オレンジ色の中に佇み、遠くを眺めていた。カタログによると、この人形は「火葬人」となっている。文明の生み出した美術を焼き払ってしまう存在なのだろうか。


Thomas Schütte, Model for a Museum (Detail)

作品が設置される以前から存在していた噴水の石の上にも仙人のような格好をした人形が置かれている。彼は水という自然を見つめる存在だろうか。

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