佐藤雅彦展 新しい × (作り方+分かり方)
HAPPENINGText: Alma Reyes
1999年、NHKの教育番組「おかあさんといっしょ」で“今月の歌”として「だんご3兄弟」が初披露された。キャッチーな歌詞とタンゴのリズム、串に刺さった団子姿の三兄弟がそれぞれ異なる性格を表現した魅力的な手描きアニメ映像が全国的な人気を瞬時に呼び起こした。作詞・プロデュースは佐藤雅彦。一時期は社会現象になるほど爆発的な人気を誇り、シングルは当時380万枚以上を売り上げた。
[左]だんご3兄弟(NHK「おかあさんといっしょ」 より)[上]フレーミー[下]ぼてじん(上下ともにNHK「ピタゴラスイッチ」より) 画像提供:横浜美術館
佐藤雅彦は1990年代からコミュニケーションデザイン界で広く知られる存在だ。その驚異的な活動の幅はテレビ番組やコマーシャル、書籍、ゲーム、漫画、ポスター、教材にまで及んでいる。横浜美術館で開催中の大規模個展「佐藤雅彦展 新しい × (作り方+分かり方)」は、11月3日まで、表現者/教育者である佐藤氏が各作品でアイデアを紡ぎ出すプロセスを丹念に検証する。その精密な方法論は「作り方を作る」ことにあり、さらに本質的には、あらゆるプロセスに込められた意図を理解することにある。
Photo: STUDIO DUNK
佐藤はこう説明する。『別のルールで物を作ろうと考えている…それ以来、私は、何かを作り出す時には、いきなり「作り出す」のではなく、「作り方から作る」ということを心がけてきました。では、何かを作り出す時の「何か」って、私にとって、どういうものでしょうか。どうしたら、あることを伝えることができるか、どうしたらあることを 分かってもらえるか。これが、私のやりたいことの本性でした。それを現実に達成するための方法が「作り方を作る」 だったのです。』(横浜美術館プレスリリースより)
イデアの工場(DNP大日本印刷)2006年
佐藤は、東京大学卒業後、1987年から約7年間、株式会社電通に勤務。CMプランナーとして、グラフィック、漫画、雑誌コラムデザインなど、スキルを磨いた。しかし、佐藤はアートやデザインそのものには直接的な関心がなかった。代わりに、日常生活で目にするありふれた品々——印刷された段ボール、座席表、劇場のチケットなど——を収集することに没頭していた。それらの物を並べて観察するうちに、全てのアイテムが枠組みの中に配置されていることに気づいた。この洞察がグラフィック表現への新たなアプローチを導く礎となったのである。
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