リヨン・ビエンナーレ 2009

HAPPENINGText: Kana Sunayama

第10回目を数える記念すべき今回のリヨン・ビエンナーレは、大御所キュレーター、カトリーヌ・ダヴィッドを筆頭に当初企画が進んでいたが、オープニングまで数ヶ月という時点で、カトリーヌ・ダヴィッドが突然キュレーターを辞任してしまったところから始まる。フランスを代表する国際展でもあるリヨン・ビエンナーレを中止、または延期をすることはできない。そこで 世界中に拡がるそのネットワークを駆使し、既に20以上のビエンナーレを手がけた経験を持つ、ホウ・ハンルウが選ばれた。彼が挑戦したポジションはカトリーヌ・ダヴィッドの後継者としてではなく、ほんの数ヶ月で国際現代アートビエンナーレを立ち上げるという、アート関係者が皆不可能だと心の中で感じていたことを、可能にすることに他ならなかった。

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Takahiro Iwasaki – Reflection Model, 2001

日頃から都市空間における現代アートや文化政策の役割、パブリックとプライベートな空間の境界の在り方に興味を持つホウ・ハンルウは、サンフランシスコ在住の中国人キュレーターである。ハンス・ウルリッヒ・オブリストやダニエル・バーンバウムなどと肩を並べながら国際的に活躍する引っ張りだこの若手キュレーターの一人だ。彼は第10回リヨン・ビエンナーレを、ギイ・ドゥボールの「スペクタクルの社会」を喚起させる「日常のスペクタクル」と名付けた。

このテーマの元に展示された作品たちは、4つのチャプターに分けられ、各作品のキャプションにはチャプターの違いが色分けされた。

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Sarah Sze – Untitled (Portable Planetarium), 2009

一つ目は「モノの魔力」。キッチュな東洋的モチーフがプリントされた壁紙で潜在的な出会いの空間を創り上げる作品で知られるマイケル・リンは、上海のある金物屋の商品を一店まるごと買い上げ、それらのオブジェを形、色、機能によって選り分け、アーカイブ化したものを、博物館に並ぶ作品のようにコンテナーごとにインスタレーションとして展示した。サラ・ジーはいつもどおり、日常生活で使用される様々なオブジェを組み合わせ、フラジールな偶然性を作品いっぱいに孕んだインスタレーション。

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Pedro Cabrita Reis – Les Dormeurs, 2009

その他には、鉄筋コンクリートの廃墟となっていた倉庫跡の800平米もの空間を利用してネオンのインスタレーションを見せたペドロ・カブリタ・レイス、 岩崎貴宏の繊細で詩的な感動を与えてくれる彫刻群などに、まさに「モノの魔力」を感じる。

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