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三上晴子

PEOPLEText: Mariko Takei

80年代以降、情報戦争と身体をテーマに大規模なインスタレーションを相次いで発表し、メディアアートシーンを世界的に牽引するアーティスト、三上晴子。その活動を総合的に紹介するアジア初の大規模なインスタレーション展「Desire of Codes - 欲望のコード – 」が3月20日より山口情報芸術センター[YCAM]で開催されている。観客を監視するインタラクティブ・インスタレーションから見えてくるものとは?情報生態系に渦巻く欲望をベースに新作を展開している三上氏にお話を伺った。

これまでの活動内容を含め、自己紹介をお願いします。

三上晴子(みかみせいこ)アーティスト/多摩美術大学教授。1984年より、「情報社会と身体」をテーマに、インスタレーション作品を発表し、90年代にはニューヨークを拠点に活動し、主に欧米のギャラリーや美術館で作品を展示してきました。観客参加型のインタアクティブ・アート作品を最初に発表発表したのは、1991年のP3Art&Environmentの「パルス・ビート〜あなたの脈拍を貸して下さい」で、その後、知覚によるインターフェイスを中心とし、視線入力による作品(キヤノン・アートラボ企画展、1996)、聴覚と身体内音による作品(ICC常設作品、1997)、触覚による三次元認識の作品(NY、1998)、重力を第6の知覚と捉えた作品「グラヴィセルズ」(山口情報芸術センター[YCAM]、2004-)などのメディアアート作品を発表してきました。

今回、YCAMで発表している新作「Desire of Codes|欲望のコード」は、カルチュールフーセット(ストックホルム、スウェーデン、2005-2006)での展示後、ドイツ(2007)、イギリス(2008)、フランス(2008)などで展示してきた作品ですが、今回の個展では、新作2点を含めた最新バージョンを制作/展示しています。これらの作品のうち2点は2010年7月30日から9月5日まで「欧州文化首都」であるドルトムンド「RUHR ISEA」(ドイツ)、もう1点は8月5日から9月20日までウィーンの現代美術館「キュンストラーハウス」で展示を行い、その後ヨーロッパを巡回する予定です。

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三上晴子「Desire of Codes|欲望のコード」(新作/YCAM委嘱作品)撮影:丸尾隆一(YCAM InterLab)

80年代より「情報社会と身体」をテーマにインスタレーション作品を発表されていますが、いくつかこれまでに手がけた作品をご紹介いただけますか?

90年代からは、知覚によるインターフェイスを中心とするインタラクティブ作品を制作しているのですが、知覚というある意味複雑で広範なテーマを、視覚、聴覚、触覚、重力覚など、それぞれのインターフェースから個別に研究、制作しながらプロジェクトを進めています。

例えば、視覚をテーマとした「モレキュラー・インフォマティクス―視線のモルフォロジー」(1996)は、視線によって3次元空間に形態を生成していくインスタレーションですが、「視ることそのものを視る」、「無意識と意識の連鎖」という2つのコンセプトから、空間と身体のダイアローグ環境を表現しています。また、『「視ることそのものを視る」とはどういうことなのか』、視るという行為を観客に問いかけた作品です。

また、重力をテーマとした建築家の市川創太さんとのコラボレーション作品「グラヴィセルズ」では、重力が第6の知覚と呼ばれていることに注目し、立って歩くという単純なインタラクションにより、重力の作用で、どのように空間が歪むかを表現しました。私たちの身体は、内耳にある三半規管によって重力を捉え、同時に、抵抗します。車に乗ってほんの少しこの知覚を揺すぶられるだけで酔ってしまう程、重力と身体の関係性は深いのです。知覚を補助し身体機能を補完するものとして、目には眼鏡、耳には補聴器が装着されるように、人口内耳は重力という知覚を補い、長年の重力の歪みで衰えた老人は転ばなくなるとも言われています。この作品は、2004年にYCAMで発表後、世界8カ国12ヵ所で展示を行い、今回、改訂バージョンとして、YCAMで展示されています。

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三上晴子+市川創太「gravicells —重力と抵抗」(改訂新バージョン/YCAM委嘱作品)撮影:丸尾隆一(YCAM InterLab)

ほかのプロジェクトも「インターフェイスは、我々の内側に存在している」ということを軸に制作され、形態としての作品そのものよりも、身体と空間の間に存在するインターメディウムな情報交換自体のプロセスを表現しています。今回の新作「Desire of Codes|欲望のコード」からは作品の方向性が「知覚としての身体」から「情報化社会としての個人へ」とシフトしてきたように思いますが、80年代の私の作品テーマが「情報社会と身体」ということもあり、大きな括りでは、同じようなテーマで作品を制作しているとも言えます。

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