ミルクシェイク
PEOPLEText: Aya Shomura
香港のアートや文化機関・施設のビジュアル・ブランディングに力を入れながら、デザイン・スタジオ「ミルクシェイク」は2006年の創設以来様々な団体や企業と仕事を行なってきた。ジェイヴィン・モは、その創設者であり、グラフィック・デザイナーである。
今回、アジアのクリエイターをゲストに迎えるトークシリーズの第1回「モバイル・トーク 2016 #1 大阪」が7月30日に開催される。このイベントはアジア各国を巡回しながら、「#インディペンデント/#コレクティヴ」(個/集合体)を今年のテーマに据えて、各地で様々なクリエイターを招致する。若い世代とともにローカル・アートやデザイン展示を巻き込むプロジェクトに情熱を燃やすジェイヴィンはそのイベントの企画者の一人。幸運にも彼のキャリアやアイディアについて話を聞く機会を得た。
Javin Mo
まずは自己紹介をお願いします。
香港在住のグラフィック・デザイナー、ジェイヴィン・モです。香港バプティスト大学のコミュニケーション・コース出身で、プロパーなデザイン教育は受けていません。香港の有名デザイン・ブランディングエージェンシー、トミー・リー・デザイン・ワークショップでグラフィック・デザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。その会社は香港でも有名なブランド・コンサル企業のひとつです。2004年には、ベネトン社が主宰するコミュニケーションリサーチセンター「ファブリカ」に1年間参加。2006年に自分のデザイン・スタジオ「ミルクシェイク」を立ち上げ、以来、主に香港のアート・カルチャー系機関・イベントのデザインを手がけています。
FABRICA REUNION project, 2016 © FABRICA REUNION
ファブリカに参加していらっしゃいましたね。そこでは若手デザイナーたちからどのような影響を受けましたか?
実は、現在、欧州旅行の途中に立ち寄ったロンドンでこのインタビューに答えているのですが、直前までずっとファブリカのあるイタリアのトレヴィソに滞在していました。6月24日から26日に開催された「ファブリカ・リユニオン」プロジェクトにちょうど出席していたのです。1994年~2015年の同窓生(ファブリカンティという総称がついている)およそ200人が一堂に会す素晴らしい機会でした。このプロジェクトを通して新しい出会いもあり、「故郷」とも言うべきファブリカに1日だけ集い、同窓生だけではなく最前線で活躍するクリエイターの素晴らしい話を聞き、ファブリカ創設が参加者に与えてきた影響やインスピレーションを改めて知ることができました。夜にはミュージック・パフォーマンスとともにワインやビール、イタリアのヴェネト地方の人気カクテル「スピリッツ」も堪能しました。
ファブリカには安藤忠雄の建築物やカラーズ・マガジンという象徴的なものもありますが、滞在した1年間で出会った各国からの参加者の存在こそが非常に魅力的で、私に影響を与えてくれました。それこそ毎日が新しい出会いの連続で、彼らとの会話や共同生活そのものがインスピレーションでありクリエイティヴィティーだったのです。
“Microwave International New Media Arts Festival – ENIGMA”, 2012
その後、なぜ香港で「ミルクシェイク」を立ち上げたのですか?
ファブリカのビジュアル・コミュニケーション部門での1年を経て、「香港に何を持ち帰れるだろう」と興味を持つと同時に自問するようになりました。香港は非常にコマーシャルに特化した都市であり、10年ほど前まではデザインやブランディングに真剣に取り組むアート・文化施設はほとんどありませんでした。
イタリアにいた当時、休日にはアムステルダムやベルリン、ロンドンなど色々な都市を巡っていました。その時の一番素晴らしい経験は、欧州ではグラフィック・デザイナーとアートや文化分野の責任者が同等であり、互いに尊重しあい、結果的にいつも素晴らしいデザインワークに繋がっていることを知ったことです。帰国後に同様のことを香港で行なおうとするのは間違いなく大きな挑戦でした。けれどもその実現のために、デザイン・スタジオ「ミルクシェイク」を創設したのです。
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