ATAK NIGHT 4
HAPPENINGText: Mariko Takei
山口情報芸術センター[YCAM](以下YCAM)にて定期的に開催されている、メディアテクノロジーを駆使したサウンドアートをフィーチャーするイベント「sound tectonics」。7回目となる今回、このシリーズをYCAMと共にプロデュースしたのが渋谷慶一郎率いる音楽レーベル「ATAK」だ。伝説的サウンドアーティストの刀根康尚、フィンランドのデュオ、パン・ソニック、渋谷慶一郎、 evalaの4組のアーティストを参加メンバーにヨーロッパツアーを終えたばかりの「ATAK NIGHT 4」がついに日本に上陸。 電子音響とサイエンスが融合した先鋭なサウンドパフォーマンスを体感できるこのイベントは、YCAMを皮切りに京都、東京の2カ所を巡回する。その「ATAK NIGHT 4」主宰の渋谷慶一郎氏にATAK NIGHTについて話を伺った。
音楽レーベルATAKを主宰されていますが、そのショウケースであるATAK NIGHTについて教えてください。いつ、どのようにスタートしたのでしょうか?またそのきっかけなども教えてください。
これは最近よく思うのですがATAKができたのが2002年で、この手のレーベルとしてはスタートは遅いんですよね。最後のレーベルと言ってもいいくらい。で、最初のATAK NIGHTは2004年だったと思うのですが、始めた理由は簡単でその頃サウンドアートとかエレクトロニカ(懐かしい!)と呼ばれるような音楽で音がいいイベントが無かったからです。
言うまでもなくコンピュータやある種のテクノロジーを媒介に音楽を作った場合、重要なのは最終的なアウトプット、つまりスピーカーと空間です。
適切な場所に高解像度のサウンドシステムを持ち込んで試行錯誤するというやり方しかないと思ったわけです。だからクラブがダメでホールがいい、とかそういう問題じゃなくてコンサートホールはアコースティック楽器にチューニングされて設計されているから電子的な音とは相性が悪かったりします。ただクラブにも問題はあるのですが。なので毎回場所と人選はかなり慎重に進めています。
ATAK NIGHT 4 in Berlin, Photo: Stefan Riekeles
今年4度目となるATAK NIGHTがヨーロッパツアーツアーを終えて日本で4月下旬から行われるそうですね。ツアー参加メンバーを含めATAK NIGHT4についてご紹介ください。
ヨーロッパや台湾など数カ国でやってきましたが、全てこのメンバーでというわけではなくて場所によってフレキシブルに変化していました。ただ、今回のヨーロッパツアーの中心になっていたのはベルリンのクラブトランスメディアーレでの公演でジャパンツアーはそのときと同じフルラインナップになっています。
また、刀根さんが今回のツアーでやる作品が8チャンネルサラウンドの作品であることが発端になっていて、山口のYCAMと東京のUNITの公演では8チャンネルのスピーカーが観客を包囲するかたちで行うことになっています。これは音量も音の解像度も段違いなレベルになると思います。
ベルリンでの公演の様子はこちらで見ることができます。
ATAK NIGHT 4 in Berlin, Photo: Takeshi Furuya
今回の参加メンバーでは、特にフルクサスの創設メンバーで、73才にして現役で電子音楽家として活躍する刀根康尚氏の参加に注目している人も多いかと思います。今回の参加メンバーを選ぶにあたり、どのように決定されたのでしょうか?選定の経緯を教えていただけたらと思います。
選定していないんですよね。思い浮かぶのがこのメンツだったというだけで。
パン・ソニックは一昨年のATAK NIGHT3でも一緒にツアーをしたのですが、そのときに彼らの時間管理能力の高さに驚いたんですね。僕は音楽でそれは非常に重要だと思っているのですが。あと電子音楽で演奏という言葉がこれだけ的確なのも他に例がない。手とテクノロジーの関係としても興味深い、というかありがちなヒューマンインターフェイスの実験からは刺激を受けないけど彼らの音楽には常に触発されるものがある。なので、今彼らがどうなっているのか知りたいし、また一緒にやりたいと思ったのでお願いしました。
刀根康尚さんは何回か日本で会って話す機会があって、いわゆる括弧付きの音楽に対する嫌悪感とか(笑)共通するものが多かったり音の好みが似ているんだけど、音楽は全然違うということも大きいです。あと作業の仕方の偏執的なところとかもある種共通していて、高橋悠治さんからも多分合うと思うとか言われていたりしたんですけど。で、刀根さんのライフワークというか怪物的な代表作と言っていい万葉集全首を音響化した作品をATAKからリリースできないかという相談を頂いて、僕はその作品に非常に興味があったのと尊敬していたので是非という話になったんです。全部聴くと2000時間を超えるので(!)アプリケーション化してCD-ROMのようなかたちでのリリースになると思いますが。今回のツアー参加はそのことが発端になっています。
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