SPRING(スプリング)わきあがる鼓動

HAPPENINGText: Alma Reyes

第二会場では、ルクセンブルク出身のアーティストでありチェリストでもある、ツェ・スーメイによるビデオ・プロジェクションが上映されている。《エコー》(2003年)は、アルプスの広大で静かな高地を舞台に、チェロ奏者でもある作家自身を小さくも果敢な存在として描き出している。彼女の鮮やかな赤いドレスと輝く緑の草原は、薄暗い影を落とす山々と鮮烈なコントラストをなす。チェロの音色は周囲に響き渡り、自然と人間の対話を成立させている。


ツェ・スーメイ《エコー》2003年、金沢21世紀美術館蔵 © su-mei tse

同館収蔵の傑作群のうち多くを占めるモネ、ゴッホ、ゴーガン、スーラ、シニャック、ルドンらの作品は、創作における困難を、旅によって乗り越えていった画家たちの足跡として紹介されている。彼らの絵画の冒険をめぐる言葉は、同じ旅人としてのわれわれのまなざしを、時代を超えた想像の旅へといざなう。


アンゼルム・キーファー《ライン川》2023年、個人蔵 Photo: Nina Slavcheva © Anselm Kiefer

展覧会は、ドイツ人作家アンゼルム・キーファーによる魅惑的な絵画《ライン川》(2023年)と、多角的な活動を展開する作家・名和晃平による2体の鹿のインスタレーションで締めくくられている。キーファーの抽象的な風景は、油彩、金箔などの素材で彩られ、ドイツのライン川やヨーロッパの重層的な歴史を想起させるとともに、地球のダイナミックな構成を象徴している。鑑賞者は、謎めいた神秘的な感覚とともにその絵を見つめることになる。


展示風景:名和晃平《PixCell-Deer#72 (Aurora)》2022年、個人蔵 / 名和晃平《PixCell-Deer#74》2024年、ポーラ美術館蔵

名和の彫刻は、彼独自の概念である「PixCell(ピクセル)」と呼ばれる無数の人工クリスタルボールで構成されており、彼の代名詞として親しまれている。クリスタルボールはまるで太陽の象徴のようであり、鹿のもつ神秘性を増幅させ、異界との境界を可視化しているかのようだ。

展覧会を堪能した後は、鑑賞の余韻に浸りながら、彫刻作品が点在する広大な森の遊歩道を散策してほしい。爽やかで清々しい春の空気に包まれ、真に心躍る体験となるだろう。

SPRING(スプリング)わきあがる鼓動
会期:2025年12月13日(土)~2026年5月31日(日)
開館時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
TEL:0460-84-2111
https://www.polamuseum.or.jp

Text: Alma Reyes
Translation: Hoshino Yoshihara
Photos: Courtesy of Pola Museum of Art

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葛西由香
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