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田名網敬一 記憶の冒険

HAPPENINGText: Alma Reyes

カーニバルや賑やかな祭りの色彩豊かなヴィネットのように、田名網敬一ほど爆発的で広がりのある想像力を持つ謎めいた芸術家は他にないだろう。第二次世界大戦、1960年代から70年代にかけてのポップ・アートの商業主義、マリリン・モンロー、エルビス・プレスリー、ビートルズ、そして宇宙開発時代を取り巻く容赦ないメディア広告を生き抜いてきた田名網は、象徴主義とイメージの世界を、幻想と深遠な人間心理が織り成す独自の幻覚的宇宙の中で文字通り紡いできた。フィラデルフィア美術館、テート・モダン、ニューヨーク近代美術館、シカゴ美術館などで開催されたポップアートの大回顧展では、日本のポップ・アートのパイオニアとして国際的に高く評価された。


「田名網敬一 記憶の冒険」国立新美術館、2024年  展示風景  Photo: Alma Reyes

近年、急速に再評価が進む田名網敬一の60年以上にわたる創作の軌跡を振り返る世界初の大規模な回顧展「田名網敬一 記憶の冒険」が、国立新美術館で11月11日まで開催されている。本展は、8月9日の田名網氏の急逝によって、彼の貴重な遺産を記念する機会となった。
「夢」、「記憶」、「幻想」は、田名網敬一の作品を解釈する上で絶対的なキーワードである。来場者は、絵画、コラージュ、立体作品、アニメーション、実験映像、インスタレーションなど、ジャンルや既存のルールに捉われることなく精力的に制作された膨大な作品群に圧倒されるだろう。


「パラヴェンティ:田名網敬一」プラダ青山店、東京、2023年   © Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

最初の展示室では、「プロローグ」として、現世と来世を結ぶ橋をテーマにした田名網の超現実的なアプローチを紹介する。ひとつは、本展のために特別に制作された《百橋図》(2024年)。8枚のパネルで構成された屏風には、無数の雑誌のスクラップ・コラージュを囲むように、赤くうねる橋が絡み合い、首切りされた女性の頭部、奇妙な動物や海の生き物、戦闘機などが描かれ、作家の異様で幻想的な記憶が浮かび上がる。もうひとつの作品は、プロジェクションマッピングで複数の橋にさまざまな生き物たちが投影された高さ3.5メートルのインスタレーション。


田名網敬一《百橋図》2024年  Photo: Alma Reyes

両作品とも北斎の「諸国名橋一覧(百橋一覧)」(1823年)と「生首の図」(1842年)からインスピレーションを得ており、田名網の心に恐怖と神秘主義を植え付けた。また、目黒のホテル雅叙園にあった太鼓橋の絵、亀戸天神社、曾我蕭白の「石橋図」などからも影響を受け、橋をモチーフに作品制作を度々行なっている。彼は橋を俗なるものと聖なるものの境界として、悲劇的な別れ、生と死後の世界のつながり、そして演劇的な娯楽、神秘的な伝説、無限の闇の河川敷空間に見立てた。

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