岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ TIME UNFOLDING HERE

HAPPENINGText: Alma Reyes

岡﨑の多彩な絵画のユニークな要素は、キャンバスの比率に対応した正確な文字数と比率で、表現的なシーケンスを意味する長いタイトルが添えられていることだ。キャプションは物語のように読み取れ、感情を言葉で表現する身体部位、風、火、水、太陽、土、雨、雲、花などと触れ合う生き物、あるいは単に日常の営みを描写している。芸術と言葉の繋がりは空間と時間を生み出し、岡﨑の文学への強い傾倒を象徴している。


左《山の向こうの中腹のちっぽけな村はすでに見えなくなり、ふたたび春が巡ってきた。葡萄の木はあたかも塀の笠石の下を匍う病める大蛇のように見える。生あたたかい空気のなかを褐色の光が動きまわっていた。似たりよったりの毎日が作りだす空白は伐り残した若木まで切り倒すだろう。日々の暮らしのなかで樹木の茂みは岩のように突き出ている。》
右《自分の暮らした村がこんなに小さく思われたことはない。太陽が姿をみせた。背の高いポプラの林は風に吹き動かされる砂浜のような格好をしている。切れ目のないその連続を見ているだけで眼がくらんでくる。変り映えしない日々の連続に酔うことができたなら象や蛇をしとめた気にもなれる。蝶が舞うようにそんな風に彼はものを識ったのである。》
2002年、東京都現代美術館蔵 Photo: Ichiro Otani

例えば、1997年の2枚組の絵画は、コーヒーを飲んでいるときに起こる感覚のメタファーを描いている。この時期の岡﨑の色使いは、2002年の小さな村を描いた2枚組のパネルや、2022年以降の作品のように、徐々に力強い色調を発するようになるのとは対照的に、繊細であまり混雑していないように見える。これらの作品には、小さくて魅力的な、0号・サムホールサイズの絵画も含まれている。


《What secrets lie within!” Moon pearls crowned garden walls. “Look how shadows dance!” Hark, Wind whispered phantom tales. “Stars sang memories deep.” “Time weaves silver dreams!” she shouted joyfully,”He lives!”
And from the mountains the echo came back upon her, “He lives!” “Is the spring coming?” Dawn mist cloaked emerald hills. “Do you have a garden?” Roses climbed ancient walls. “What makes the grass grow?” Rain whispered to the earth. “Where do old tales rest?” Time slept in shadows where moorland flowers bloom and fade.》2024年 Photo: Shu Nakagawa

2022年以降、岡﨑は、絵画の平面内にあらかじめ決められた物理的な比例関係を取り入れるために、垂直と水平のパネルを交互に配置することにさらに力を注いだ。岡﨑は、『…絵画は宇宙空間を浮遊している宇宙飛行士と同様に上下の非可逆的な関係は生じない。一方で接合されたパネルは、画面にパネル同士の比例関係を持ち込む。あるパネルからあるパネルへの視線の移行は… どこから、どこを対比するかという主従が反転可能な空間的階層を作り出す。』と語っている。


《Heads poking out, a shape with lion body and man’s head. A gaze blank and pitiless as the sun. Embankment crowded, a vast image troubles my sight. Everyone shouting, voices affectionate, half-crying. We’re all gonna die. Darkness drops again. I heard ducks floating.
Black rocks absorbed light. Was I all along born on the far shore? Cave pitch dark. Colors fade. Stretch out a hand. World already ended.

Spread legs. Never to perish again. Only a presence – the subtle movement of air as someone searched. Solely ephemeral presence lingers. I remember who I am. Earthquake shook. Sun black as sackcloth. Moon like blood. Stars fell to earth, fig tree dropping unripe fruit. Sky split apart, mountains and islands moved. Kings, slaves shouted, “Hide us from the throne, from the Lamb’s wrath.” Their day has come. I’m gonna faint!》2024年  Courtesy of the artist and galerie frank elbaz, Paris Photo: Shu Nakagawa

さらに晩年には、サイズやスケール、直線的な時間の制約から解き放たれていく。色彩の融合がより強く大胆になり、筆致もより太く複雑になっている。これらは、海と空の相関関係を想起させる縦横2枚のパネルを組み合わせた2024年の作品や、頭、黒い岩、洞窟、地震、動く山や島に言及した2024年の別の作品に感じられる。このようなスケールの大きな絵画は、色とりどりの水しぶきが宝石のように、あるいは振り付けられた動きの中でホバリングする抽象的な存在のように照らし出され、岡﨑の再活性化した魂を放出している。

岡﨑乾二郎 而今而後ジコンジゴ Time Unfolding Here
会期:2025年4月29日(火・祝)〜7月21日(月・祝)
開館時間:10:00〜18:00
休館日:月曜日(7月21日は開館)
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
TEL:03-5245-4111(代表)
https://www.mot-art-museum.jp

Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado

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