スタジオ・ムンバイ展「PRAXIS」

HAPPENINGText: Miki Matsumoto

徹底的に突き詰められた具体的なスタディは、ジャンルの垣根を越えて見るものに多くの示唆を与える。TOTOギャラリー・間にて開催中の「スタジオ・ムンバイ展:PRAXIS」は、第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(2010年)にて特別表彰を受けたほか、日本でも「建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの“感じ”」展(2011年、東京都現代美術館)に参加するなど、近年注目を集める気鋭の建築集団による日本初個展である。

TOTOギャラリー・間での展示の他、同時期に東京国立近代美術館でもプロジェクト(※)を進行しており、単なる建築という枠を越え、文化、伝統といった根源的なテーマに包括的にアプローチする彼らの活動を知る絶好の機会といえるだろう。
※東京国立近代美術館(本館)の前庭に、「夏の家」と題する東屋を設置し、人々の憩いの場として提供している(2012年8月26日〜2013年1月14日)。

スタジオ・ムンバイ展「PRAXIS」
© Nacása & Partners Inc.

スタジオ・ムンバイは、インドを代表する建築家であるビジョイ・ジェインによって、1995年に設立された。設計と施工とを異なる組織が分担することが主流となっている建築の世界において、熟練職人と建築家からなる人的ネットワークの下、敷地の造成から設計、施工までを一貫して手作業で行うのが特徴だ。

ムンバイおよびその郊外に構えられた事務所では、インド各地出身の有能な職人たち(大工、石工、鉄工、金工、井戸掘り工など)約120名が住み込みで働いており、各地に伝わる伝統技術を受け継いできた職人たちの知恵と技能に、インド、アメリカ、イギリスなどの地で経験を積んだジェイン氏の哲学的な思索が組み合わさり、モダンでありながら深い情緒を湛えた空間をつくりだす。その取り組みには、「エコロジカル」「サステイナブル」という言葉では括りきれない豊潤な可能性が満ちている。

その深い情緒を成り立たせている彼らの建築プロセスは、我々が通常思い描く手順とは大分様相が異なる。ここで主宰者であるジェイン氏の言葉をひとつ紹介したい。

『建築家の仕事には、あらゆるものが含まれる。具体的なものもあれば、漠然としたものも理論的なものもある。つまり、人間の存在に関わることなら基本的に何でも含まれる。「PRAXIS」というものをこのように存在論的に解釈すると、スタジオ・ムンバイの仕事がなぜ反復作業によって成り立っているか、なぜ案を検討するために、大型モックアップやスケッチや図面を作成し、素材のスタディを重ねるのかが見えてくる。それはすなわち独自の思想を練り上げ、自発的に組織を形成していくためなのだ。』(「STUDIO MUMBAI : Praxis」TOTO出版)

スタジオ・ムンバイ展「PRAXIS」
赤い布表紙のスケッチブックは、職人たちが日頃持ち歩いているもの。様々な計算式やデザイン案が記されている。© Nacása & Partners Inc.

展覧会タイトルに掲げられている「PRAXIS」は、自然や社会に対する人間の「働きかけ」を指す言葉であり、抽象的思弁としての「理論」の対極にある。西欧で建築の経験を積んだジェイン氏は、スタジオ・ムンバイの立ち上げ直後、現代の建築作法に則り、図面を用意して現場に臨んだ。だがインドでは職人の多くが正式な教育を受けておらず、文字や図面が読めない者も多い。そのような環境で最適なコミュニケーション言語とは何か ― 様々な方法を試みた結果、スケッチや模型、原寸大のモックアップ、素材スタディといった具体的なものを用い、実際に現場で試作を重ねながら調整するのが、最も効率的であることに気づいたという。

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