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高嶺 格「とおくてよくみえない」展

HAPPENINGText: Meiko Maruyama

続いて来館者は「緑の部屋」という展示室に誘導される。そこには21点の平面作品が、タイトルなどのキャプションや作品の解説とともに展示されている。しかし展示されているのは、実は日常的に使用する毛布や蚤の市でアーティストが見つけた刺繍など。

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「緑の部屋」より、横浜美術館での展示風景 撮影:今井智己

この部屋は「美術館ではあらゆるものが言説化される」というシステムに注目した、遊び心に溢れた部屋。劇的にあてられた照明がまたそれらを印象づける。一方で、部屋の出口に展示された二つの作品は対照的で謎めいている。一つは緑の粘土でできた額、そして向かい合っているのは緑の粘土でできた蔦のように壁を覆うレリーフだ。

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高嶺 格《A Big Blow-job》2004年(2011再制作)、横浜美術館での展示風景 撮影:今井智己

次は暗い部屋の中で展開する作品《A Big Blow-job》だ。遊園地にいるかの様なメロディに導かれて、緩やかなスロープを上ると、ステージの上にたどり着く。そこからは四角い部屋の全体が見渡せるようなのだが、見えるのは僅かだけ。スポットライトのような映像が床や壁に書かれた文字を追う。その文字は「あなたのみている赤とわたしの見ている赤とは、本当に同じ赤なのか?」、というフレーズではじまる美学者吉岡洋氏による「新・共通感覚論」の文章だ。それは床に敷きつめられた砂や紐にかかったTシャツなど部屋にある様々な物を映し出す。把握できそうでできない部屋の全体像が来館者を部屋に留まらせるのかもしれない。

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高嶺 格《物々交感論》2005年(2011再制作)、横浜美術館での展示風景

次のビデオインスタレーション《物々交感論》では、モニターとその両脇に和装した男女のパネルがある。中央のモニターではアーティストが自分の着ている服とニューヨークの路上で売っている古着を次々と交換し、徐々に男性の服装から女性の服へと変化していく様子が映し出されている。時々両脇の和装した人物のパネルから台詞が発せられる。映像についてのコメントの様でもあり、適当である様にも聞こえる。

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