ポンピドゥー・センター・コレクション展「フルーツ・オブ・パッション」
HAPPENINGText: Maaru Hiyama
ポンピドゥー・センターはフランスにある総合文化施設だ。美術館、音響研究所、図書館などが入っている。芸術の街であるパリはやはり、芸術に関して幅広く手厚く支援を行っている。2002年に創設された現代美術プロジェクト(le Projet pour l’art contemporain/PAC)は学芸員とコレクターが共に作品購入を直接決定するという独創的な運営方法である。
今回兵庫県立美術館にて行われている本展は、監修者である国立近代美術館グラフィック・アート室長のヨナス・ストルスヴが創設からの10年間で特に代表的なものを選出した。本展はイントロダクションとフルーツ・オブ・パッションの二部編成となっている。第一部のイントロダクションは現代美術の巨匠たちの作品の展示である。現代美術は難解な作品だというイメージはあるが、タッチや絵の具の色ひとつひとつに作家の情熱がふんだんに込められている。その繊細な変化から作家の情熱が垣間見える。
サイ・トゥオンブリー《無題》1969年 © Cy Twombly Foundation © Centre Pompidou, MNAM-CCI, Philippe Migeat, Dist.RMN-GP
サイ・トゥオンブリーはアメリカの抽象主義表現の画家である。《無題》(1969年)では灰色の画面に小さい引っ搔き傷のような線が見られる。この線は小さい子供が偶然壁に書いた落書き、中途半端に消し忘れ去られた筆跡…。いろいろ解釈はできるがどの答えを取ってみても何故だか切なくなる。
第二部のフルーツ・オブ・パッションはポンピドゥー・センターから選ばれた作品が展示されている。歩き進む度に表情の違う作品が展示されており、現代芸術の幅広さと奥深さと楽しさを知ることができるだろう。
イザ・ゲンツケン《無題》2006年 © Isa Genzken, Courtesy Galerie Daniel Buchholz, Cologne / Berlin © Centre Pompidou, MNAM-CCI, Georges Meguerditchian, Dist.RMN-GP
イザ・ゲンツケンは様々なものを使い彫刻作品をつくるドイツを代表する美術作家である。彼女の作品は彫刻でありながらストイックだ。《無題》(2006年)は日常にあるもので作られた彫刻であるがどこか厳しく冷たい印象を受ける。角度によって変わるガラスの光も何者を寄せ付けない美しさを感じる。
ファラー・アタッシ《作業場》2011年 © Farah Atassi © Centre Pompidou, MNAM-CCI, Georges Meguerditchian, Dist.RMN-GP
ファラー・アタッシは1981年生まれの新進気鋭のアーティストだ。モザイクの可能性をとことん突き詰めた彼女の作品《作業場》(2011年)はモザイクだけで空間をつくる。その中に置かれた建物たちはどこか不自然でモザイクの空間と拮抗している。一見ポップに見えるが現代社会のひずみさえ感じさせる作品である。
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