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「アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」

HAPPENINGText: Alma Reyes

金沢を訪れたら、金沢21世紀美術館での充実した体験を抜きには語れない。2004年にオープンしたこの美術館は、著名な建築家である妹島和世+西沢立衛/SANAAによって、『まちに開かれた公園のような美術館』という建築コンセプトに基づいて設計された。三方が道路に囲まれている美術館敷地内にどこからでも人々が訪れることができる、正面や裏側といった区別のない円形構造が採用され、展示室やカフェレストラン、アートライブラリーなど、それぞれに個性豊かな各施設はほぼ水平方向に配置。街のような広がりを生み出す。外壁や建物内の壁面の多くにガラスを採用し、内部と外部など互いに異なる空間にいる者同士が互いの様子や気配を感じ取ることができるといった、出会いの感覚も演出されている。そしてもちろん、市民が楽しめるアート・インスタレーションを常設展示した広大な公園による自然とのつながりなど、これまでにない美術館となっている。

美術館で最も有名な常設展示作品は、オラファー・エリアソンの《カラー・アクティヴィティ・ハウス》(2010年)と、レアンドロ・エルリッヒの《スイミング・プール》(2004年)だろう。屋外の芝生広場に設置された《カラー・アクティビティ・ハウス》は、色の三原色ーシアン、マゼンタ、イエローの色ガラスの壁が、一点を中心に渦巻き状のパビリオンを形成している作品。壁の間を通り抜けると、重なり合う色彩に包まれ、周囲の街並みにカラフルな鮮やかさを加えており、美術館の白いファサードを背景に万華鏡のような鮮やかな色彩を放つ。ライムストーンのデッキが周囲を縁取る《スイミング・プール》は、ここから波立つプールを見下ろすと、あたかも深く水で満たされているかのように見えるが、ガラスの下は水色の空間となっていて、鑑賞者はこの内部にも入ることができる。この2大インスタレーションだけでも、この美術館に足を運ぶ価値があるだろう。


アレックス・ダ・コルテ《開かれた窓》(2018年)©︎ Alex Da Corte studio

金沢21世紀美術館では、9月18日まで、ベネズエラ系アメリカ人アーティスト、アレックス・ダ・コルテの興味深い展覧会「Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」が開催されている。7つの展示室で最近作を含めた全11点の映像インスタレーションなどの作品が紹介されている。本展は、ダ・コルテにとってアジアの美術館での初めての展覧会で、色とりどりの巨大な箱型のスクリーンに映し出される映像は、一見コケティッシュだが、見る者を想像や感覚、日常生活や文化の身近な側面など、人間の深層心理に働きかける奇妙で不思議な世界へといざなう。見慣れたモチーフも近づいてよく観察すれば新たな発見がある。人生の魅力を教えてくれるかのようだ。


アレックス・ダ・コルテ《ゴム製鉛筆の悪魔》(2019年)© Alex Da Corte studio

ダ・コルテはコンセプチュアル・アーティストとして知られ、映像、彫刻、絵画、インスタレーションなど多様なメディアを駆使しながら、世俗的な消費主義、ポップカルチャー、人間の過ち、耽溺の苦境など、アメリカ中産階級の視覚文化をサンプリングし、超現実的なイメージを制作している。彼の作品は、2019年のヴェネチア・ビエンナーレや、2022年のニューヨークのホイットニー・ビエンナーレなど、数多くの国際的なイベントや展覧会に出品されている。また、デンマークのヘニング現代美術館アンディ・ウォーホル美術館とのコラボレーションも行っている。


アレックス・ダ・コルテ《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》(2022年)「Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」展示風景 金沢21世紀美術館 2023年 撮影:今井智己

《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》(2022年)は、虹の7色 ― Red(赤)、Orange(オレンジ)、Yellow(黄色)、Green(緑)、Blue(青)、Indigo(藍)、Violet(紫)のそれぞれの頭文字をタイトルにした作品。フィラデルフィア美術館の有名なコンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957年)の部屋を模した場所で、マルセル・デュシャン(1887-1968年)に扮したダ・コルテが、人間の存在、時間、恋人との愛と別れなどをオムニバス形式で演じ分ける映像作品だ。会期中に7回、キューブの色を塗り変えるパフォーマンスも行われる。

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