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「アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」

HAPPENINGText: Alma Reyes

ダ・コルテは、《地獄の季節》(2012年)/《不仲》(2012年)/《不可能なこと》(2012年)で、恋愛における痛み、ジェンダー・アイデンティティ、ドラッグやアルコールなどの依存症に対する解放など、極めて重要な人間の感情を演じている。このコンセプトは、フランスの詩人アルチュール・ランボーの詩を基にした3部作にインスパイアされている。《チェルシー・ホテル No.2》(2010年)では、私物を盗まれたというダ・コルテの個人的な体験が、世界的なソングライター、レナード・コーエンのBGMをバックにユーモラスに比喩され、過剰な消費社会を想起させる。


アレックス・ダ・コルテ《ゴム製鉛筆の悪魔》(2019年)© Alex Da Corte studio

57のチャプターとプロローグで構成された映像作品《ゴム製鉛筆の悪魔》(2019年)。20世紀のテレビの時代を中心に、同時代を生きた人々の記憶、あるいはリヴァイバルによって新たに刻まれたアイコンやそれらの文化的背景からインスピレーションを得た全長2時間40分の映像が4つに分割されている。パフォーマーの一人はダ・コルテで、ピンクパンサー、シルベスター・ザ・キャット、ミスター・ロジャース、悪魔といったポップカルチャーのキャラクターを演じており、疎外感、人間の欲望と幻想など、現代社会に対する嘲笑の象徴が見て取れる。


アレックス・ダ・コルテ《人体の動きに関する研究》(2014年)/《恋人たちの死》(2011年)/ 《その重さを運ぶ》(2003年)/ 《短剣》(2011年)/ 《ドラ》(2021年)「Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」展示風景 金沢21世紀美術館 2023年 撮影:今井智己

色とりどりのテーブルと椅子が5つ並んだ展示室では、巨大な箱のパターンから一歩踏み込んで、代わりに小さなテレビを設置し、ケチャップの瓶を運ぶ演者を通して、日常生活のさまざまなテーマ ー 愛と弱さ、家族を監視する殺人鬼の絶望、パンデミック時の孤立、機械との酩酊をプロットしている。来場者は椅子に座り、じっくりと映像を見ることができる。


アレックス・ダ・コルテ《マウス・ミュージアム(ヴァン・ゴッホの耳)》(2022年)「Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」展示風景 金沢21世紀美術館 2023年 撮影:今井智己

他にユニークなのは、暗くて黒いパビリオンの中にある曲線的なガラスケースの中に入れられた《マウス・ミュージアム(ヴァン・ゴッホの耳)》(2022年)だ。このインスタレーションは、スウェーデン系アメリカ人の彫刻家クレス・オルデンバーグが制作した自身の芸術作品のための美術館をダ・コルテが再現したもので、ミッキーマウスを象徴する小さい頃から集めていたプラスチックなどの収集品が展示されている。ダ・コルテは、食器、果物、野菜、おもちゃ、マスク、マウスの左耳を切り取りゴッホへのオマージュとして制作したゴッホの耳の粘土模型に至るまで、模型、マケット、その他の小道具の個人的な思い出の品を集めた。来場者は、ダ・コルテの触覚と言葉に出来ない感情の世界観に入り込み、彼の創造の源を垣間見ることができる。

美術館へ訪れるなら、多様な植物が四季を通じて私たちの目を楽しませてくれるパトリック・ブランの《緑の橋》(2004年)、アニッシュ・カプーアの《L’Origine du monde》(2004年)、ジェームズ・タレルの《ブルー・プラネット・スカイ》(2004年)などの常設インスタレーションもお見逃しなく。

アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄
会期:2023年4月29日(土)〜9月18日(月)
開館時間:10:00〜18:00(金・土曜日20:00まで)
休館日:月曜日(但し最終日は開館)
会場:金沢21世紀美術館
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
TEL:076-220-2800(代表)
https://www.kanazawa21.jp

Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado

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