アレックス・ヴェルヘスト

PEOPLEText: Aya Shomura

映像や電話など現代のテクノロジーを駆使して、インタラクティブなビデオ・インスタレーション作品を制作するアレックス・ヴェルヘスト。彼女の作品「Temps mort / Idle times – dinner scene」(アイドルタイム ー晩餐の光景)が第18回文化庁メディア芸術祭、アート部門で新人賞を受賞した。今回、彼女に作品や思いについて聞くことができた。

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自己紹介をお願いします。

こんにちは。私は、アレックス・ヴェルヘストです。ベルギーのブリュッセルに暮らし、メディア・アーティストとして活動しています。私の作品は、主にコミュニケーションの難しさや、言語、物語に焦点を合わせています。各プロジェクトの基盤となるのは、既存の、あるいは新しく書いた、物語の台本です。私は物語を中心として、一連の作品を作ります。

まずは、おめでとうございます!今回の受賞についてのご感想を教えてください。

賞をいただけたことに興奮し、光栄に思っています。私にとって、とても特別な受賞です。「Temps Mort」(アイドルタイム)の非線形な構造は、日本を旅しながら村上春樹のネズミに関する三部作を読んでいる間思いつきました。この作品で日本の賞をいただけたので、心温まる受賞です。

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Installation view at TAZ Belgium © Sam Monballiu

「Temps mort / Idle times」(アイドルタイム)の食事の場面について教えていただけますか?どのような場面なのでしょうか?

「Temps mort」(アイドルタイム)は対話型の実験的な映像作品です。ある家族の5人のメンバーが全員には、6人目の家父長の自殺を望む動機があります。表題の由来は、近代技術が生み出す奇妙な「中間」の時間です。ネットワークで繋がっている機器を通して交流するようになってから、時間というものは、全く違うものになりました。
 
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“Temps mort / Idle times – dinner scene” Alex Verhaest © Dauwens & Beernaert Gallery

時間と記憶を過去と現在の合流点として捉えたのが食事の場面です。ある番号に電話をすることで、作品内の電話が鳴り、キャラクターが会話を始めます。5人のうち4人のキャラクターは、一つのシーンで2回登場します。2人は、お互いと、また他のメンバーと家父長について話します。メンバーの半分は、家父長がまだ死んでいないかのように話し、もう半分は、彼が既に亡き人であるかのように話します。
 
初期ルネサンス時代の画家達は、同じ人物を2回登場させることで物語と時間の経過を描写しました。近代メディアにおいてこの物語技法を試してみるのが面白そうだと思いました。

いつ、何故メディア・アーティストになろうと決めたのですか?

ブリュセッルで教育を受けている間、アイランド6アートセンターでレジデンシーをするため、中国に渡りました。そこで出会ったアーティストたちは、日中ITの仕事をして、仕事後はコードやミクロコントローラーで遊んでいました。私は全くの新人で、プログラミングやテクノロジーについて何も知らなかったので、アジアのハッカー文化にとても感心しました。作品にその影響が浸透するのには数年かかりましたが、あの時、現代のテクノロジーの扱い方を学びたいと決めました。

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