NIKE 公式オンラインストア

アートフェア札幌 2015

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

ここからは20軒の出展ギャラリーのうち、まずは初参加の6軒を紹介する。

32_eitoeiko_okamoto2
1407号室 eitoeiko(東京) Photo: Erika Kusumi

東京のエイトエイコは、アートとそうでないものの境界を意識する作品に注目して、アーティストの活動や発表の場を国内外へ広げているコマーシャルギャラリーだ。入り口では、冒頭でも触れた岡本光博による、放射性廃棄物の収納にも使われている黒フレコンバッグで作られた正義のゆるキャラ「モレシャン」が出迎えた。客室の奥では島本了多による「頭鑑ポスター」や「磁器のカップヌードル(中身付)」など、制作過程や意図を知りたくなるユニークな作品を本人の解説つきで楽しむことができた。

156
1408号室 ギャラリーかわまつ(東京) Photo: Erika Kusumi

東京のギャラリーかわまつは、バンクシーらに代表されるスプレーペイントを用いた国内外のストリートアートを取扱うギャラリー。大人たちが行き交う夜の街で一人、傘を捨てた少女がカラフルな雨を浴びる姿を描いたロームカウチの「エモーショナル・レイン」や、時計の針を必死で戻そうとする囚人を描いた北崎亜唯斗の「これが後悔」、ストリートアートで世界的に有名なロンドンのライアン・カラナン(別名:ライカ)による半立体のガラス作品「クラシック・スマイリーズ&ハーツ」などそれぞれに強いメッセージ性を放つ作品が並んだ。

124
1409号室 エミグレ・コレクション(東京) Photo: Erika Kusumi

エミグレ・コレクションは、2014年に東京・新富へビューイングルームをオープンした新進気鋭のギャラリーだ。ベッドに並べられたまるやまあさみの「レコードジャケットシリーズ」は、山口百恵やザ・ピーナッツなど昔の歌手のレコードジャケットが、刺繍ならではの表現で手縫いされており、レトロでありながら新鮮で、元のデザインがクールであるほど面白く見えるような愛着を持たせてくれる作品だった。他にも若手アーティストによるポップな色彩の絵画や、キリクによる力強い造形のジュエリーアクセサリーが並ぶ中で、アクリルの円を塗り重ねた鈴木誌織作品の透明感も印象的だった。

14_lad
1303号室 LADギャラリー(名古屋) Photo: Erika Kusumi

初出展都市である名古屋のLADギャラリーはコンセプト、コンテクストをキーワードに、若手作家の溌溂とした感性と同時代性を備えた作品を発信するギャラリー。壁には市川友章による、赤、緑、黄を基調とした3枚の絵画「浮遊-アルノルフィーニ夫妻の肖像」と小さなフィギュアが展示されていた。これは作家自身が超えられないほど憧れているというヤン・ファン・エイクの名画に描かれた人物を、子どもの頃に憧れていたアニメヒーローの「キン消し」(かつて日本の少年達に流行したゴム製フィギュア)を模して立体化し、それらが名画の上で浮遊するかのように描いた作品だ。夜になると、札幌を拠点とする写真家、藤倉翼が撮影した大阪「道頓堀」のネオンサインをプリントして立体のアート作品とすることでその価値を再構成した「Dotonbori」が窓際で光を放っていた。

16_mikaduki
1308号室 ギャラリー三日月(函館) Photo: Erika Kusumi

北海道の初出展都市、函館のギャラリー三日月は、100年以上前に建てられた土蔵を利用し、北海道の南側や東北の美術作家を中心としつつ、ジャンルを問わず月1回のペースで展覧会を開いているギャラリー。入り口付近とバスルームには、石川順による白くつややかな画面の奥から青い色彩が覗くような抽象画、ベッドサイドには、隅田信城による現実を超越した風刺画のようなシュールな作品世界、そして滝花保和による金属部品などを用いた抽象画や、坂本英子の可愛らしい人物画などが個性豊かに並んでいた。

15_toov
1310号室 ト・オン・ギャラリー/カフェ(札幌) Photo: Erika Kusumi

札幌のト・オン・ギャラリー/カフェは、北海道のアーティストを中心とした個展等を開催しながら、ギャラリーの外でも企画展のディレクションを手がけ、カフェスペースはアーティストのコミュニティや文化塾の拠点にもなっているギャラリーだ。初参加の今年は、ホテル型アートフェアであることを最大限に生かし、日本画的なCGで装丁画などを手がける気鋭のイラストレーター、松浦シオリが描いた架空の女性「葉子」がその部屋に宿泊しているというコンセプトで、彼女が愛用するツノオの鞄、脱いで置いたリポソの服やワタル.Nの靴、そして、絵の中にも描かれているシッポズ・サンプリングのアクセサリーやオノエ・ノートのノートが、部屋の中で彼女が実在するような気配を演出し、訪問者をアートの世界へ迎え入れた。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
カラードットインク
MoMA STORE