岡部昌生

PEOPLEText: Kenta Torimoto

作品についてお伺いします。土の作品とフロッタージュは根底にあるコンセプトは変わらないと思いますが、作り方は全然違いますね。作り手としては何か違いがありますか?

フロッタージュは時間、場所、物が介在しています。それを想起されるようなものに紙を当てて自分の身体で関わっていきます。土を使う時はその場所に自分の身体を投げ入れ、手で引っ張り上げます。触覚や、時間、場所性というのは非常に似ているのですが、取り出す行為が土の方がより具体的なのかもしれません。

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「色は憶えている」岡部昌生, 2012 CAI02

最近は土の作品が多いと思いますが、それは何か理由があるのですか?

広島で「土の記憶」という展示を行いました。土の層が1センチになるために100年かかるという、ひとつの時間の長さがあり、その層が色彩をつくりだします。それが今回の港さんとの「色は憶えている」という展覧会のタイトルと結びつきました。
今までは人間中心の物の考え方があったと思います。今回の港さんが展示された写真の中では放射能汚染された福島で咲き誇る花を捉えていますが、テーマに対する自分自身の態度について考えさせられました。

港さんはヴェネツィア・ビエンナーレ日本館のコミッショナーとして岡部さんを起用されたのがきっかけで、その後も幾度となく共同で作品発表を行っていますね。

コミッショナーとアーティストは一度きりの関係がほとんどのようですが、港さんとは不思議と回を重ねています。ローマ、東京、ヴェネツィア、タスマニア、広島、ベイルート、杭州、そして今回の札幌もそうです。ものを見る態度が似ている反面、僕にない部分は港さんにあって港さんにない部分は僕が補完したりといった、ユニットとしてテーマを膨らませたり深めたりすることを今までやってきたような気がします。

作品を制作する場所はどのように決めているのでしょう?

呼ばれて行く場合もあるし求めて行く場合もあります。先日行ったベイルートは、「アラブの春」という問題があり、福島以後のイメージと重なりました。中国の杭州で国交回復40年という節目の年に展示ができたことも、必然性と巡り合わせがあったからだと思います。

今も継続中のプロジェクトはありますか?

広島や根室、夕張、福島や東京の同潤会代官山アパートなど、日本の近代あるいは世界の近代に通ずるような場所があります。ほかにも沖縄や韓国の済州島、ヨーロッパなどにも行きたいと考えています。

CAI02開廊5周年記念展「色は憶えている」港千尋×岡部昌生
会期:2012年5月19日(土)~6月14日(木)
時間:13:00~23:00(日曜祝日休廊)
会場:CAI02
住所:札幌市中央区大通西5丁目昭和ビルB2
TEL:011-802-6438
主催:CAI現代芸術研究所
https://www.cai-net.jp

Text: Kenta Torimoto

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