第54回 ヴェネツィア・ビエンナーレ
HAPPENINGText: Toshiaki Hozumi
「La Biennale」と定冠詞をつけて呼ばれる、世界の国際展を代表する国際展「ヴェネツィア・ビエンナーレ」の第54回展が、2011年6月4日から11月27日まで開催された。
過去最大の89ヶ国が参加した今回のビエンナーレは一体何を残したのであろうか。そしてそれは、これまでと比べてどうだったのであろうか。
メイン館
まず結論からいえば、「国家=ネイション」というものが、今もっとも熱いトピックになりつつあることが示された、と言えよう。
グローバリズムが、様々な可能性を論議されつつ、結局は形をかえた世界中のアメリカ化=資本主義化であったことが明らかになった今、それぞれのネイションの中でどのように社会や文化に向きあうか、という課題が、現在、ナショナリズムとは異なる形で回答を出すことが求められている。そうした現代的な課題に対し、各国パビリオンは美術的によく健闘したと言えるだろう。
1980年にアペルト展が開始して以降、いつもなら新人や新しいアイディアを投入してきた企画展の方が新鮮な印象を与え、各国パビリオンの展示は、各国代表となった作家たちの、ある意味「納まってしまった」回顧的な印象を与えてきたのだが、今回は逆であった。企画展はどちらかというと見ごたえのする作品が少なく、各国パビリオンにはいつになく熱が入っていた。
メイン館展示室への入口
それは総合ディレクターのビーチェ・クリーガー(美術史家、スイス)の目論見が成功したといえるのかもしれない。今回のテーマは「ILLUMInazioni/ILLUMInation」。「光」や「照明」「啓蒙」を意味するこの言葉には、まさに「ネイション」という文字が内包されている。
ギリシャ館(Diohandi)
今回のビエンナーレを企画するにあたり、ビーチェ・クリーガーは、美術という分野が社会や世論にあらたな光をあてるという(あててきた)可能性があるとともに、ネイションの再構築が今後大きく前景化しつつあることを示したかったのであろう。ヴェネツィア・ビエンナーレは他の国際美術展と大きく異なる部分は国別展示が存在することである。確かにこれを生かすことは、この国際美術展の生命線となりえる。
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