第53回 ヴェネツィア・ビエンナーレ

HAPPENINGText: Daniel Kalt

この地球上で最も素晴らしいアートの祭典のひとつであるヴェネツィア・ビエンナーレ。残念ながら私はその重要なイベントのオープニングを逃し、9月のはじめになるまでヴェネツィアを訪れることができずにいた。ニューヨークとロンドンでのファッションの仕事を辞退した私は、せめて遅ればせながらでもこの美術の祭典に触れるため、美しき街ヴェネツィアへと向かった。世界で最も美しい街のひとつであるここでは、ジャルディーニ広場の外にひっそりと立つパビリオンを探すうちに、入り組んだカーレ(小道)、ソットポルテゴ(建物の下を通る通路)、ラモ(枝道)のせいで100%迷子になってしまう。開催から1ヶ月を過ぎた会場で、私はビエンナーレに残されたものを求めて、華やかに飛び回る国際的なアート界のエリートたちの陰で、ひたすら歩き回った。

53rd Venice Biennale

ビエンナーレのオープニングから参加しないことにはメリットもある。(ひとつはすぐ原稿を書くように強制されたり、そのためにあの巨大なプレスセンターで席と電源を取り合ったり、結果電気トラブルが起きて手持ちの機材が壊れてしまったりという可能性を回避できるということだが)それは、先に来た人たちが大体総括してくれているということだ。すなわちある意味で、見るべきものとそうでないものが既に分かっているとも言える。これは少なくとも一般的に言われているレベルでの話で、私の同僚からはアルセナーレ会場の、総合監督バーンバウムによる企画展「ファーレ・モンディ(世界をつくる)」が良い展示であると聞いたが、自分の眼で確かめてみると、議論の余地のないほど素晴らしい幾つかの作品はあるものの、同僚の意見には賛同しかねた。

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アルセナーレに新しくオープンした敷地内後部は素晴らしい会場であった。ミランダ・ジュライの洞察深いインスタレーションと、シモーネ・ベルティの植物彫刻によるミニチュアのランド・アートが展示されている。楽しく個性的で、真に価値のある会場だったが、沢山の虫に刺されてしまい、夏の終わりのビエンナーレの旅で最初の苦い思い出となった。

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その後数えきれない程のレビューに目を通した結果、とても惹かれる作品をいくつか見つけた。しかし決して9月に期待することなかれ。これに関しては4年前からすでに解っていたことだが、その年も夏の終わりにヴェネツィアに出掛け、私はピピロッティ・リストの教会でのインスタレーションをどうしても見たいと願っていた。しかし作品は私が到着するちょうど前日に教会側の厳しい干渉によって撤去されてしまっていたのである。そして同じく楽しみにしていたオラファー・エリアソンの展示「ユア・ブラック・ホライズン」も当時メンテナンスのため閉館していた(しかし、これは幸運なことにこの夏ドゥブロヴニクを訪れた際に見ることができた。現在この作品は、クロアチアの驚異的な美を誇るロプド島にあるのだ)。

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