矢柳 剛

PEOPLEText: Ayako Ishii

近年、岡本信治郎氏との連続個展「笑いの哲学(74 74)」やコシノジュンコ氏との共同制作「越境」など、中国北京を舞台にした発表をされています。中国はじめ海外のアート概況、また日本の現状についてご意見をお聞かせください。

北京の東京画廊のオープニングに参加させてもらいましたが、まずアートに対する興味、活気が凄い。オープニングだけで1,000人を超える群衆でした。作品に対する質問も次々にぶつけられる。いまの日本人にはないことです。

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矢柳剛展「POP UKI – 色彩の魔術 -」, クロスホテル札幌 展示風景, 2011

自分はまた、パリに3年間暮らしていたことがありますが、フランスの文化政策はしっかりしていて、パリでは子ども向けアート教育や美術館にも子ども専用コーナーが充実しています。それも、専門家の監修のもと、パリの都市景観について皆で考えようという類の非常に高度な内容が提供されています。また、休日に家族ぐるみで美術館を訪れるといったようなことが習慣化されており、それが素養となり、大人になると自動的に文化に対する価値が身に備わっています。それが国全体の文化の下支えとなっているのです。美術を大切にすることは、人間を大切にすることにつながります。

翻って、日本国内では残念ながら、文化を盛り上げようという機運自体が感じらません。日本には、美術教育と文化政策を充実させる余地がまだまだあります。

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矢柳剛展「POP UKI – 色彩の魔術 -」, クロスホテル札幌 展示風景, 2011

今回、ホテルでの展覧会を行うにあたっては、作品にできるだけ近寄ってもらってかまわないということも念頭にありました。クロスホテル札幌ではホテル従業員のみならず、館内レストランのパティシエさんがお客さんに展示を勧めていると聞いて、大変喜ばしく思いました。日本の学芸員が見習うべき姿勢です。

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