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矢柳 剛

PEOPLEText: Ayako Ishii

札幌では、2014年の札幌ビエンナーレ開催に向けて活動が本格化してきています。地方都市・札幌におけるアート振興についてどうご覧になりますか?

札幌ビエンナーレについては地方の特色や強みを打ち出せる、非常によい機会だと思いますので、札幌の試みには大賛成です。そしてローカルに考えるだけでなく、是非グローバルに発信していってほしいと思います。道民、市民の一人一人がメッセンジャーとして発信していく自覚を持つ、そういった意識改革、仕掛け作りこそがいま求められているといえます。

ビレンナーレ全般についていうと、過渡期を迎えているといえます。国内でも各地でビエンナーレが開催されていますが、どれも画一化されていてつまらなくなってきていることは否めません。そんな今こそ、札幌は誰もやったことのない新しい試みに徹底的に挑戦すべきです。しかも、札幌はその土壌が整っているのです。私は世界各国の都市をみてきましたが、現在の札幌のような190万人くらいの人口の都市は、政治的にも経済的にも文化的にも変革に対応しやすいサイズです。その意味でも札幌は好機にあるといえます。市だけでなく道も巻き込んで大々的に展開してはどうでしょうか。また、明治時代の開拓時に札幌農学校にクラーク博士がいたように、ビエンナーレに際しても外部からアドバイザーを招聘してはどうでしょうか。内輪で運営しているとどうしても人間関係に支配されがちになるので、客観的な目線を持つことが必要です。日和見主義に楔をぶち込むことが必要なのです。

長期的なアート振興あるいは都市計画の一部として、コンテンポラリーに特化した展示施設が街の中心部にあってもいいですね。美術館の名前がそのまま地下鉄の停車駅名になるような、そんなインフラ改革も札幌のような新しい都市でこそ実現可能といえます。

また、北海道・札幌は海外に誇れるアイヌ文化を有しています。これをいかにコンテンポラリーアートの文脈に取り入れるか。それにより、北海道・札幌の独自色は強化されると思います。どんどん発信していくべきです。

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矢柳剛展「POP UKI – 色彩の魔術 -」, クロスホテル札幌 オープニングイベントの様子, 2011

アーティストを志す若者たちへのメッセージをお願いします。

1968年の「パリ5月革命」当時、自分はパリにいました。歴史的一大事です。食料危機にも遭遇しました。それをどうアートにするかです。日常の様々な現象をどうアートにするか受け取り方は一人一人違う。そこに自分のエスプリというものが見えてきます。私はひたすらに描きたいものを描いてきました。時代に受けるものを探さなくとも、時代が何を要求しているかは日常の三度の食事と同じように理屈でなく自然に入ってくるのです。

自分自身と対話すること、真剣であることが大切です。私は、30年来、毎朝5時に起床して座禅とジョギングを続けていますが、これは内なるもう一人の自分に批判させ、二人いる自分を一人に重ね合わせる時間を持つためです。甘えの構造はアートを生みません。徹底的に自問自答します。最近の若いアーティストは親から多額の学資を得て、悠然と生活していますが、アーティストは貧乏も経験しないといけないと思います。

また、外へ出て行くことも大切です。私は、生まれ故郷の帯広はもちろん、サンパウロもパリも全てふるさとだと思っています。日本という港の中にとどまっていても何も生まれない。大波が襲ってきたら飲み込まれて終わりです。どんどん外に出て行く気概をもってください。そして、どんどん意見を戦わせてください。ケンカ・激論がアートを生みます。

矢柳剛展「POP UKI – 色彩の魔術 -」
会期:2011年4月22日(金)~7月10日(日)
会場:クロスホテル札幌
住所:札幌市中央区北2西2
TEL: 011-272-0010
主催:クロスホテル札幌
キュレーション:SHIFT
協力:東京画廊+BTAP、まちなかアート、正文舎印刷株式会社
連携企画:札幌ビエンナーレ・プレ企画 2011
https://crossmet.jp/sapporo/

Text: Ayako Ishii
Photos: Ryoichi Kawajiri

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