飯沼英樹

PEOPLEText: Yuko Miyakoshi

今年の2月にアートフェア「TOKYO FRONTLINE」を訪れ、何人かの人に注目すべき作家は?と質問したところ、ほとんどの人から「飯沼英樹」いう名前が挙がってきた。その時の展示がヨーロッパでの就学、アーティスト活動を経て日本へ戻って来た飯沼氏の日本初発表だった。

ビビッドなピンクを背景に歩く女性たちの姿が、鮮烈な印象を残す。かたわらには街中で撮影したというモデルの女性たちの写真も展示されている。これはもしかしたら盗撮では?それにしても、ぱっと見のプラスティックな印象とはうらはらに、この彫刻には確かな造形力ががある。一体この作品を作ったのはどんな作家なんだろう?新進気鋭の作風といい、唯一無比の存在感といい、謎の多い作家である。今回のインタビューでは、作品への思いや制作の裏話もお伺いし、飯沼氏の素顔に迫った。

飯沼英樹
Photo: Yuko Miyakoshi

現在のようなスタイルで女性の木彫彫刻を彫られるようになったのは、いつ頃からですか?

2000年に愛知芸大大学院を1年休学してパリに留学しました。卒業した後、フランスのブルターニュ地方にあるナント国立美術大学に留学しました。フランスで学んだことは、西洋美術のルールにのっとった作品は、わざわざ説明しなくても正しく解釈してもらえるってことですね。学科が分かれていなかったのでパフォーマンスやビデオ、写真、CGなどに触れるチャンスもありました。アーティストそれぞれが、西洋美術史を勉強し、一体自分の作品が美術史のどこに位置づけられるのか、誰から影響を受けているのか、ということを常に意識しています。そういった新しい価値観に触れながら、今のようなスタイルの作品を作るようになったのはその頃からです。

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「Esrumsoe」 H70cm(2004)

飯沼さんは下絵をおこすことなく、写真から作品を彫り起こすそうですが、どのように素材を集められているのですか?

TOKYO FRONTLINE」で発表したスナイパーシリーズでは、日本の街を歩く一般の女性を撮影しました。あえて写真を使うのは、生身の女性だとイマジネーションが湧きにくいというか、萎えてしまうというか、「人」を意識してしまうと、作れなくなるのです。 身近な人を作るとか、美術学校でよくやるようにモデルを立たせて作るということは、まずやらないですね。 だから自分にとって全く関わりがないけど、一瞬で何か感じた人をモデルにしました。

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個展「美女」展示風景 SLANT(金沢/2011)

先日XYZ collective」(エックスワイジー・コレクティブ)と「SLANT」(金沢)で行われた個展「美女」ではファッション誌の写真を使われていましたね。

「美女」展はファッションと美女をテーマにした展覧会で、ファッション誌からモチーフを選んでいます。雑誌の中から現代女性を象徴するような写真を探しました。ギリシャ彫刻とか運慶・快慶もそうなのですが、 ポーズや服というのは昔から肉体の強さとか権威を象徴していた部分があるので、それによって僕の想像する美女を表現しています。

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個展「美女」展示風景 XYZ collective(東京/2011)

ファッションには特別な思い入れがありますか?

ファッションの流行がどんどん変わっていって、少しでも古くなってしまったものが面白いように捨てられていくのが、人間の欲とか社会の新陳代謝を表すものとして見つめていきたいテーマですね。ファション雑誌をモチーフに使っているのに、ファッションの現場のことを全く知らなかったので、2003年にミラノにあるファッションデザインの学校に留学しました。
学校では靴やTシャツの襟をデザインしたのですが、学生達は建築などファッション以外のモチーフをデザインに混ぜ込んで作品を作っていました。メディアを浸食してデザインをする手法はとても新鮮でした。
ミラノファッションの内側を体験したことは今の表現に生かされているし、最新ファッションには常に興味があります。

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