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TOKYO FRONTLINE 2012

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

オノ・ヨーコ、ホンマ・タカシなどの国際的に活躍しているアーティストを擁する Gallery 360° の壁には、永島京子の写真が辺りの空気を分けるように掛けられていた。無人の空間を写した写真には、どことなく人の気配が感じられるような温かさがある。表面にはレンチキュラレンズという透明な板がかぶせられ、視線を動かすと風景がぶれ、動いて見える。その少し懐かしさも漂わせるレンチキュラレンズの効果が生かされ、写真の中に時間の動きを映し込んでしまったような不思議なイメージを残している。

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Gallery 360° の永島京子作品 Photo: Yu Miyakoshi

アートを通じて行われる復興支援活動として開催された「KISS THE HEART」は、トーキョー・フロントラインとしても新しい試み。伊勢丹新宿店、三越日本橋本店、銀座三越のショーウインドーを舞台に「イマジネーションの力」をテーマとした新作が発表され、3月4日には出品作のオークションを実施。落札金額は全て東北の「こども芸術の家プロジェクト」に寄付される(消費税分は除く)。アーティストのヤノベケンジ飯沼英樹junaida(ジュナイダ)、ユニットでインスタレーションを制作した真鍋大度石橋素、被災地で撮影した写真を発表した緒方範人、本フェアの会場構成を手掛けた村山圭などが参加した。ヤノベケンジによるモニュメント「サン・チャイルド」。KISS THE HEARTの展示ではこのシリーズのミニチュアモデルとステンドグラスを展示

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「TOKYO PORTFOLIO REVIEW」レビュアーがアーティストに面と向かって評する Photo: Yu Miyakoshi

また、トーキョー・フロントラインが通常のアートフェアと違うのは、若いアーティストを支援するプログラムが数多くあること。アマナグループと恊働で行われた「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD」では写真家の篠山紀信や森美術館館長の南條史生などが審査にあたり、今年は川島崇志を優秀賞に選出。また、会期中には本フェアのオーガナイザーである後藤繁雄や哲学者の千葉正也、森美術館キュレーターの片岡真実などを迎えたシンポジウムや、東京都現代美術館学芸員の籔前知子や編集者の伊藤ガビン、批評家の星野太など、強力なレビュアー8名がアーティストのポートフォリオを評する「TOKYO PORTFOLIO REVIEW」など、クリエイターにとって意義深いイベントが多く開催された。

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Photo: Yu Miyakoshi

3.11の直前に開催された第1回から1年。この1年でわたしたちは、様々なものを淘汰し、心を豊かにするものを求めてきた。だからこそ、アートの価値も問われ、本当の意味で心を豊かにするものを見出すことや、一人一人がアートを体験することに気持ちが向いてきた。自分の中の壁を破るほど価値観を揺るがすアートに触れることや、現在進行形で生まれていくアートについて語ること。トーキョー・フロントラインにはそうした機会に触れられるセッションの場があり、また来年へ向けて動いている。

TOKYO FRONTLINE 2012
会期:2012年2月24日(金)~26日(日)
会場:3331 Arts Chiyoda
住所:東京都千代田区外神田6-11-14
主催:TOKYO FRONTLINE事務局 / アートビートパブリッシャーズ
ディレクター/オーガナイザー:後藤繁雄
https://www.tokyofrontline.jp

Text: Yu Miyakoshi
Photos: Yu Miyakoshi

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