渡邊希

PEOPLEText: Mariko Takei

ちょうど6月6日まで北海道立近代美術館で行われた「北海道立体表現展’10」で新作を展示していましたね。

展示したのは、新作「MASK」(2010)です。約4mも横幅があり、かなり大きな作品になりました。窓のある部屋で展示したのですが、日中と夜の見え方は全く表情が違うのです。とても晴れた日の昼は、ガラス越しに映る庭のグリーンが鮮明に作品に映り込みます。夜は、白い壁の反射光を使って、反対側にほんの少しだけ光を落としています。夜のライトアップでは真っ青に見えました。

渡邊希
「MASK」(2010)北海道立体表現展’10展示風景

作品は、麻布と、その目の荒さを埋めていく作用のある地の粉と漆を混ぜたものを使用した「乾漆」(かんしつ)という伝統技法を使っています。石膏で型を作ったものに、土と漆を混ぜたもので麻布を何枚も貼り重ねていくというものです。乾漆技法は、日本では奈良時代に仏像を作るために生まれた技術で、漆は(木と比べると)細密なこともできるのと、軽いというのが特徴です。

他の伝統技法でいうと、青森で技術習得した「津軽塗」という技法を取り入れた作品もあります。津軽塗の原点とみたいなもので、「変わり塗」といって、スタンプ状に模様を描いて、その上に何層も漆を塗り重ねて、いろいろな色を塗っていき、平らに研いでいくと模様がでてくるという技術です。

渡邊希
「スロウレイン」(2007)乾漆(漆、麻布、地の粉)

スロウレイン」(2007)は、津軽塗の一つで「紋紗」(もんしゃ)という技法を使っています。私が、基本から少しデザイン等、表現を重ねて「紋紗塗」(もんしゃぬり)をアレンジした作品で、お米の籾殻を炭にしてその粉末を撒いています。お米の場合は天然なので、縦とか四角とか三角とか顕微鏡で見ると色々な粒子になっていて、それが不思議な乱反射を起こします。江戸時代には家紋が描かれていた技術です。津軽塗は目玉模様が有名ですが、この作品は、少しでも現代的に身近に感じてもらえるかなと思った一つの提案で、津軽塗の職人の元で学んでいた時期に制作しました。

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