イン・シウジェン個展「第二の皮膚」
2010年3月18日から、イン・シウジェンの新作を集めた個展が北京のペイス・ウィルデンスタインで開催されている。このペイスギャラリーのオープニングの1ヶ月前には、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の展示「プロジェクト92」で彼女の近年の作品「収集された潜在意識(Collected Subconscious)」 が披露されている。
Skin Cube, 2009. Clothes, lights, stainless steel, 174 x 207 x 158 cm
中国の現代美術において、ジェンダーとアイデンティティは作家の創作活動そして美術作品の発展の主な原動力を占めてきた。1980年代に、中国美術界は西欧文化の流入による中国の伝統文化の変革を背景に、当時の社会意識を問い直すという文化的に大きな発展を遂げた。この時代に活躍したアーティスト達は、自己改革と多様性という点でより実験的な作品を生み出していった。その結果、社会的、文化的問題を取り扱った美術は、今日のように、現代美術という分野の中に市民権を得たのである。
ユーレンス現代芸術センター(UCCA)で2008年に行われた展示「私たちの未来(Our Future)」では、イン・シウジェンの近年の作品「内省の部屋(Introspective chamber)」が展示された。この作品は、古着を縫い合わせたカラフルな布が閉ざされた空間を囲むというインスタレーションで、見る者の想像の翼を自由に広げ、誕生と成長を経験させるものであった。まるで母親の子宮のなかに包まれ、人体の繁殖地の根源に立ち返ったような気持ちにさせるこのような作品は、イン・シウジェンが日常生活に潜む混沌を映し出したものである。現代の無秩序なライフスタイルによって安心や静寂は奪われ、人々は脆く傷つきやすくなり、人生や、繰り返される日常への希望を失った。これを背景に「内省の部屋」は、人々が現代生活に持つストレスを解き放ち、つかの間の心地よさと平穏を築くことを目的とした、人間の「原点」への回帰についての作品である。この部屋は全ての現代人のこころを蘇らせ、無垢な気持ちを取り戻させる。
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