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ロクシー・ペイン個展「機械装置」

HAPPENINGText: Ralph Yuu

自然は、幾千年もの年月のなかでゆっくりと創造と繁殖を繰り返してきた。そして我々人間の生活空間となり、人の誕生や植物の成長といった日々のちいさな出来事を見守り、壮大で彩り豊かな風景を創ってきた。 人間の創造とはそもそもこうした自然の創造の恩恵を受けて生まれたものである。しかし人類の歴史の中では、自然の創造と人間の創造は全く別の種類のものなのだ。

ロクシー・ペイン個展「機械装置」
Roxy Paine, PMU No.36, 2009 / Acrylic on linen / 106.68 x 151.13 x 11.43 cm

以前ある若い彫刻家と一緒に、現代世界における自然物と人工物の関係について対話したことがある。人はいとも簡単に「人間と自然は同類のもの」という誤解に陥ってしまうのだ。我々の目は真実の一部分しか捉えきれないのである。2010年4月24日、上海のジェームス・コハンギャラリーで、アメリカ人アーティスト、ロクシー・ペインが「機械仕掛け」の個展をスタートさせた。この個展では様々な人工的/自然的メディアを介した作品が展示され、極めて象徴的なメタファーが表現されている。

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Roxy Paine, Paint Dipper, 1997 / Steel frame, dipping tank, acrylic paint, computer, interface, relays, chair / 315 x 251.5 x 61 cm

彼の名を世に知らしめたのは、2009年にニューヨークメトロポリタン美術館の屋上に展示された、樹木を象った彫刻作品「Maelstrom」。自然の形と金属の色彩が伝統ある美術館の建築と融合し、現在と過去とがもつ異なる生命力を表現した。自然と人工との境界線に宿る生命力に、現代都市に生きる人々の姿が加わり、人工的な自然風景なる眺めを創りだしたのである。人間は、自然界の生物たちと直接話すことはできない。人工的にものを作り、それらをコンクリートの空間に配置することで、自然生物のほんとうの姿を不完全になぞるだけである。

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Roxy Paine, 17441042010 A/B/C, 2010 / Acrylic on linen

今回の個展では彼の作品と、それを作るための機械が展示される。自然発生的な形やテクスチャーを作品にもたらすために、彼は複雑な機械装置を作るのである。独特のアクリルペイントとポリエチレンのプラスチックで作られた作品はまるで自然の鍾乳石のような形を成し、極めて自然な印象を与える。機械装置が短時間のうちに複雑で多様な形状を生み出すのだ。コンピューターによって制御されたロボットのようなこの機械は、自然の調和を備えた神秘的な芸術作品を創りだす。時に失敗作も生まれるが、それがまた科学技術時代の姿を反映するのである。

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