アラン・オエイ
シンガポールで絵画を学び、その後ニューヨークで美術史を学んだアラン・オエイは、芸術家、歴史家、企業家の顔を持つ。サロン・プロジェクトや、つい最近郊外の倉庫スペースで開かれたゲリラ展覧会「ブラックアウト」に広がるクリエイティブマインドは、シンガポールのアートシーンを改善したいという思いを業界の慣習に呼びかけ、その彼の求めに応じたものである。
Lee Han Yi – Trash Talking, Photo: Noel Yeo
展覧会をキュレートするだけに止まらず、国内外のアーティストの活躍の場を提供しているアランは、芸術が単に壁掛け作品ではないことをコミュニティで知ってもらうため、企業家的センスもフル活用している。
自己紹介をお願いします。
シンガポールのラサール芸術大学で絵画を、それからニューヨークのコロンビア大学で美術史を学びました。ラサールでは、1年生の時ルネッサンス彫刻家になりたいと思い、2年生で抽象画家、3年生でコンセプチュアルなプロジェクトをやりたかったことを覚えています。特別何かに集中して取り組むことはしませんでしたが、非常に楽しかったです。
その後、コロンビア大学に進み、そこでは、ほとんどの友人やクラスメートが本格的に哲学や理論を勉強して投資銀行マンやコンサルタントの道へと進んでいきました。(それは一種の裏切りみたいなものだったのか?特に、学界が左派で、資本主義に対して批判的な時はどうか?)しかし、私にとっては、経営よりもむしろ起業に興味を持つようになっていました。(なぜなら、起業家は先に理由ありきで始めるもので、金儲けが先行しないからです)
だからサロン・プロジェクトでは、多様化しようとしたり、別の収入モデルを創出するアートプロジェクトに興味を持ったりするので、ラサールやコロンビアの両方で学んだことが生かせています。
サロン・プロジェクトについて少し聞かせていただけますか?
サロン・プロジェクトは、アーティストの専門性向上や芸術的実践の拡大を支援するためのキュレータープログラムです。我々は、反体制的で低予算なので、展覧会やプロジェクトを、倉庫や誰かの家のリビングルーム、トラック、廃墟となったスイミングプールなど変わった場所で開催しています。
Elyn Wong – Insecurities, Photo: Jason Cho
ブラックアウトのインスピレーションは何でしたか?
アーティストのドーン・ング、空き倉庫の所有などを管理しているレオン・チョンにスペースを紹介してもらいました。イメージ通りのどっしりとした空間の倉庫スペースで、何も足す必要はありませんでした。共通したキュレーターの考えは、真っ暗にして空間を落ち着かせる、ということでした。
でも私がやりたかったことは、空っぽの場所に訪問者の体験を感じられるような生きたスペースを作るという、空間の変換でした。暗闇ではセンスが研ぎ澄まされるので、どのようにして動いたのかを訪問者には正確に気付いて欲しかったのです。
これは現代生活の中で、たびたび忘れることなのですが、それは私たちがフィジカルで感覚的生き物であるということ。だから、多くの芸術や喜びを体で感じて欲しいです。
Chua Chienling – Truth and Reality
サロン・プロジェクトで期待できるエキサイティングなプロジェクトは何でしょうか?
今年は、非営利のイベント「オープンハウス」を12月に行います。サロン・プロジェクトでは、他の人や他のビジネス、社会問題が活用できるブランドとして、ブラックアウトやオープンハウスを構築していきます。
シンガポールのアートシーンについてどう思いますか?
偏狭で、田舎臭く、特権があったり、自分たちに寛大であったり。でも、希望はまだあると思います。
初めてシンガポールを訪れる人にオススメのアートスポットを教えて下さい。
シンガポール国立博物館はいつも面白いものを展示してあります。いくつか他の場所もオススメしたいのですが、一貫してなかったり一様でもなかったりするので、良心の意味で遠慮しておきます。シンガポールでは買い物したり食事したりするのもとても楽しいと思います。
Text: Fann ZJ
Translation: Kazunari Hongo