五十嵐 淳

PEOPLEText: Hanae Kawai

建築家であった祖父の影響を受けて育ち、建築設計のみに留まらず、今や北欧やヨーロッパをはじめ国内外からデザインやレクチャのオファーが後を絶たない建築家、五十嵐淳。彼は「札幌や北海道がワクワクするような場に変化していく多様な”良きウイルス”を発明していきたい」と語る。

これまで手がけた作品のこと、ミュージアムの設計のこと、そしてフリッツハンセン主催の企画展「オマージュ・アルネ・ヤコブセン」のことなど限られた質問への回答から、その言葉の背景や作品の根底に流れるコンセプト、想いの断片が見えてくる。9月にはフィンランドで開催される「ヘルシンキ・デザイン・ウィーク」のプログラムでレクチャーが組まれ、今秋から拠点の中心を札幌に移動させる彼に話を聞いた。

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Jun Igarashi

まず初めに、自己紹介をお願いします。

職業は建築家で、五十嵐淳建築設計事務所を主宰しています。

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“Rectangular Forest” Jun Igarashi, 2000, Photo: Shinkenchiku-sha

日本に限らず世界でも活躍されている五十嵐さんですが、建築という分野に興味を持たれたきっかけやその魅力について教えて下さい。

1945年以降、祖父が佐呂間町に入植し五十嵐組という工務店を始めました。祖父は工作兵をしていたそうで戦地で橋や建築を作っていたようです。佐呂間町に入植した頃は、建築に限らず木製の雪車なども作っていたと聞きました。父が二代目で私が三代目となります。私は小さな頃から祖父の影響を受けて育ち、漠然とですが建築に興味を持っていたのがキッカケで建築の道に進みました。

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“Homenaje A Arne Jacobsen” Flitz Hansen, “Seven Chair in Hikari Kukei”, Jun Igarashi, 2015

技術の発展に連れ、最近では複雑な近代建築物が多く見られます。一方で、五十嵐さんの作品は色や形もシンプルに感じます。設計し形にしていく上で、何か気をつけていることやテーマはありますか?

建築は常にテクノロジーと共に歩んできましたし、これからも同様だと思います。複雑な建築はテクノロジーの、特に構造技術によるところが多く、巨大建築物に多く用いられています。公共的な建築物に用いられている技術は一般の多くの目にさらされることが多いので、そのような建築が増えている印象となりますが、建築はそもそも人類にとって、とても原初的な存在なのです。私の建築はその原初的な部分に応答したいと考えています。特に光や風、居心地といったシンプルな快楽について思考しています。

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