ヤーノシュ・コーシャ展「画家とロボット」

HAPPENINGText: Mark Griffith

先月紹介したアートとコンピューターサイエンスとの心暖まるコラボレーションとは対照的に、今月のブダペストからは、コンピューターに対するアーティストの薄いベールに覆われた敵意という、正反対なものを表現している面白い展覧会についてお伝えしようと思う。

展示された絵画の雰囲気は奇妙で、ハンガリー人の孤立感、国際的なトレンドから距離を起き、それと並行するか全く別の道を進むというマジャール人の傾向を反映していた。


Painter, János Kósa, 2000, Painting, oil on canvas 195 x 195 cm Photo courtesy of the Hungarian University of Fine Arts

ヤーノシュ・コーシャは、私が今まで目にした中で最も自意識過剰な画家気質を表現した絵画作品を制作している。それら絵画は、通常のヨーロッパの物の見方のパターンに従い、18世紀のイラストレーションに見られるような主題を題材としている。古典的なトーガ(古代ローマ市民が着た外衣)など歴史的なドレスを着た人物を描き、あからさまに有名な絵画の模倣が見られる。それら絵画には、ベラスケスやドラクロワに見られるようなディテールはなく、人物に付随するその時代の家具やツール、遊び道具などは描かれていない。だが、それぞれの絵画には、フォーマルなシーンにロボット、コンピューターが描かれている。

コーシャがそれら絵画の時代背景を特定の時代に設定していないために、意図したよりは時代錯誤な感じを与えていない。彼の代表的な絵画では、上品だが若干無表情な美しさを持った若い女性が描かれ、何もないアーティストのスタジオを真似たような部屋で、19世紀以前の衣服を着ているものもいれば、スタンダードなギリシャのトーガのような服を着ているものもいる。


Hackers II, János Kósa, 1997, Painting, oil on canvas, 150 x 200 cm Photo courtesy of the Hungarian University of Fine Arts

その何もないスタジオは、おそらくキリコ、ダリ、マグリットからきたのだろう。このシーンの何処かには、1950年代の空想小説の挿し絵からそのまま飛び出してきたようなロボットが描かれていて、ジョージ・ルーカスがスターウォーズにコミックロボ執事としてC3POを登場させた時には既に皮肉なジョークの非反語的な描写として描かれている。スタンリー・スペンサーの戦前の絵画のミックスのような感じで、お洒落さを排除したタマラ・ド・レンピッカの1920年代の肖像画のような印象も与えている。

ヨーロッパのこの地区で時折見られるこれら皮肉の併置は、全く可笑しいものではない。ある絵画では、線画で描かれたコンピューターのある部屋で唯一の立体的なオブジェクトとして3人のやせ衰えた裸の男達が描かれ、非人間的な非現実が彼等を取り巻いている。

コーシャは、彼の絵画の中で、コンピューターは冷たく、非人間的、不愉快に曖昧で冷淡だという彼自身の苦悩のメッセージを表現している。彼は、そのどの要素も好きではないのだ。

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