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ジョン・カリン

PEOPLEText: Matt Smith

現在、シカゴ現代美術館では「ジョン・カリン展」が、8月23日まで開催されている。彼の作品からは、クルーベやマネ、ブーシェ、ティエポロ、エル・グレコ、クラーナハといった巨匠達の作品要素がぎっしりと詰まっており、作品の中で取り扱われる題材や構成(例えば卒業アルバムや保険の広告、通信販売のカタログなど)が、現代的な印象を与えている。


Park City Grill, 2000, Oil on canvas, 38×30 in. Collection Walker Art Center, Minneapolis, Justin Smith Purchase Fund, 2000. Courtesy Andrea Rosen Gallery, New York and Sadie Coles HQ, Ltd., London. Photo: Andy Keate © John Currin

しかしカリンの作品は、ただ題材や構成が他とは違うという以上に、何か強烈な力を持っている。美術評論家ピーター・シェルダールが『カリンは、かなりグロテスクとクラシックな優美の究極な状態を、作品でひとつのものにした』(*1)と述べているが、彼の作品にエネルギーを与えているものは何なのだろうか?

まず、カリンの作品には明確なコンセプトを築く過程があることに注目したい。制作された年代順に作品を追ってみると、まず最初に目にするのが、どんよりとした女子学生の作品で、これは卒業アルバムから取った写真がベースになった作品だ。生徒達はニュートラルでモノクロの背景の中に佇んでいる (1989年から1990年にかけて制作。この作品は今回の展覧会では展示されていない)。若い彼女達は、年上でエネルギーに満ちた中年女性達に遠慮をしているかのようだ。


Ms Omni, 1993, Oil on canvas. 48x38in, Stefan T. Edlis and Gael Neeson Collection. Courtesy Andrea Rosen Gallery. Photo: Peter Muscato © John Currin

そしてこれ以降に制作された作品では、しばしばプロポーションが大幅に調整された人物像を描いている。例えば、「ナディン・ゴーディマー」(1992年)は、実存する小説家の肖像画なのだが、実際の彼女の頭は、カリンが描くほど大きくはない。「ムーブド・オーバー・レディ」(1991年)では、キャンバスの左に髪の短い引きつった笑顔の女性を描いている。


Lovers in the Country, 1993, Oil on canvas, 52×40 in. Collection Andrea Rosen, New York. Courtesy Andrea Rosen Gallery, New York. Photo: Fred Scruton © John Currin

90年代半ばになると、これまで頻繁に取り上げてきた悲愴感のあるモデルから決別し、ロマンチックなカップルを頻繁に描くようになる。そういった作品に登場する男性はヒゲをはやしていたり、流行遅れの南部の紳士だったりと様々だ。

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