ヒロミ・タンゴ

PEOPLEText: Ayumi Yakura

現在開催されている、シンガポール美術館の児童向け企画展「イマジナリウム展:地球の終わりまで」に、アジア各地から集められたアーティスト9名の中で日本人として唯一出品されていますが、どのような作品を発表されたのですか? また、子ども達には何を伝えたいと考えていますか?

所属ギャラリーのサリバン+ストランフが私の作品をアート・ステージ・シンガポールアート・バーゼル 香港で展示してくれ、また私の代わりにシンガポール美術館のキュレーターに会って初期段階の関係を築いてくれたので、とても恵まれていると思います。サリバン+ストランフは最近シンガポールにもギャラリーをオープンし、シンガポール美術館との連絡やロジスティックの手配などにおいて、とても協力的でした。

このプロジェクトでは、3〜12歳の子供のために大規模なインスタレーションを作るため、「トカゲのしっぽ」という作品を採用しました。トカゲは危険を感じると尻尾を落とし、それはまた新しく生えてくる、という独特な能力にインスパイアされたのです。

Lizard Tail (Breaking Cycle) #3, 2015, pigment print on paper, edition 1 of 6 + 2AP, 81 x 170 cm, Hiromi Tango
Hiromi Tango, Lizard Tail (Breaking Cycle) #3, 2015, Pigment print on paper, Edition 1 of 6 + 2AP, 810 x 1,700 mm

作品の一部として、リジー、テリー、ザラーという名前の、3人の子供のお話を創作しました。彼らは、友達が悲しんでいる時に音楽や踊りで友達を励ます能力を持っています。子供達が自分の感じていることを話せるようになる何か、自己表現としてのアートが持つ癒しの力を利用した何か、そして子供達が悲しみや恐怖を感じている時に、もっと元気になれるような何かを作りたいと思いました。子供達には想像力を持ち続けて欲しいですし、アートを通じて元気になって欲しいと願っています。

シンガポール美術館のチームとキュレーターであるジョン・タンは、私のビジョンをできる限り忠実に作品化することに協力的で、壁にデザインを描いてくれたり、ダンスパフォーマンスやワークショップで使用したトカゲの尻尾の形をしたテーブルを作ってくれたりしました。彼らの取り組みとプロ意識には、とても感銘を受けました。シンガポール美術館のチームが子供の視点で展示会を作ろうとしていることがしっかりと感じられたし、展示計画の全段階で子供の見方を考慮にいれていると感じました。

NUSダンス・アンサンブルによるオープニングパフォーマンスによって、「トカゲのしっぽ」プロジェクトはさらに弾みがつきました。結果として、子供達もインスパイアされ、想像力を膨らませたことと思います。子供達の目が大きく見開かれ、涙をためているのを自分の目で見たのは、この展示で一番美しい瞬間のひとつでした。

パトリシア・ユングファー博士がブックレットの制作をサポートしてくれて、子供達が家に持ち帰って読んだり、色をつけたりできるようにしてくれました。

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Hiromi Tango, Monster Hotel, 2014, Photo: Mark Sherwood

インスタレーション「ヒロミ・ホテル」や「モンスター・ホテル」もユニークな作品ですね。鑑賞者のリアクションはいかがでしたか?

モンスター・ホテル」も8歳以下の子供向けのフェィスティバルの一環として、子供のために制作された作品です。恐怖、感覚、アイディア、記憶など、誰もが心の中にモンスターを抱えていますが、それに対処し、より深く理解するためにモンスターを引き出す場所を用意することは難しくて、気持ちのいいものではありません。子供のそういったことに対する恐怖心を軽くしてあげるのが、本プロジェクトのゴールでした。児童とその親からは素晴らしい反応がありました。子供達が、創造性と考えや感覚に正直になるよう背中を押された時に思いつく物事には、驚いてしまいます。

ヒロミ・ホテル」は人々に居心地がいい場所を提供し、しばらくの間ただ休憩してもらうというアイディアの、大人版です。誰でも来て雑談ができ、自分の何かをシェアするのにちょうどいい心地良い場所を作るという発想は、公共スペースでのインハビテーションの経験から生まれ出たものです。ヒロミ・ホテルではそれをさらに次のレベルまで持って行き、私が実際その場にいて誰かとシェアすることを促すのではなく、感情的または知的な重荷を降ろすのに必要とされる快適さや、インスピレーションを解き放つための環境を、空間そのものが作り上げています。この機会に、大人は様々なアイデアや記憶、感情などで応じました。仕事や学校、社会の仕組みの中で必要とされるファサードの裏に、人は多くを抱えているということにとても惹き付けられます。

2013年には、出身地でもある四国で「瀬戸内国際芸術祭」に参加されました。作品を通した地域との関わりについて教えてください。

これは私が故郷の近くに戻ることになった、とても特別なプロジェクトでした。伝統的な漁業が廃れるにつれ、多くの若者が仕事を求めて去っています。生まれた時からずっとその地域に住んでいるという高齢の方たちや、生活のための伝統産業がない将来の不安定さに直面している子供達と関わりました。「瀬戸内国際芸術祭」の目標のひとつは観光推進で、彫刻インスタレーションのスタート地点として、伝統的な青いロープと網を使って漁業を参考にした作品を一緒に制作しました。制作と祝典パフォーマンスへの参加では、地域の様々な年齢の方と作業をしました。高齢者と若者が新たな形で一緒になって認め合い、村の伝統的なあり方を省みて、将来への新たな希望を表現するという、素晴らしい経験をしました。

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