文月悠光

PEOPLEText: Ayumi Yakura

今年は初のエッセイ集「洗礼ダイアリー」を刊行されました。中でも、女性詩人ということで男性から不快な質問を受けた体験を題材としたエッセイ「セックスすれば詩が書けるのか問題」はSNSでも話題になっていますね。

自分が女性だから女性問題にも関心がありますが、きっかけはたまたま自分の身にそういうことが起きたからですよね。不躾な質問をしてくる男性に、『なんか嫌だな…』と思っても笑顔で聞いてしまって、後悔を繰り返している女性は多いと思うんです。『その場で言い返せばいい』という正論では折り合いがつかない部分があって、私もどちらかというとその場で言葉を飲み込んでモヤモヤしてしまうので、自分なりの心の整理の付け方を、長めの文章を書きながら導きだせたらいいなという気持ちで書いています。

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エッセイ集「洗礼ダイアリー」(ポプラ社)

男性から攻撃されると、「男性なんて」という感じで、女性側から壁を作ってしまう場合もあると思います。でも、男性読者が私のエッセイを自分の事のように受けとめてくれたり、『男性は男性で社会の中で逃げないということを義務づけられた窮屈な生き物なのかもしれない』と私が書いた事に対して『よく書いてくれている』と言う男性もいて、気持ちが穏やかになりました。自分が思った事をちゃんと伝わるような言葉にすれば、それだけで楽しんでくれる人がいるいうのは発見だったし、今後の執筆活動でも宝になる経験だったと思っています。

詩集とエッセイ集には共通する題材もありますが、伝わり方が違うような気がします。

そうですね。鋭さとか、ハッとさせる部分では詩の方が勝っているのかもしれないですけど、エッセイは詩の中で凝縮されている言葉を丁寧にほぐしてその過程をじっくり描くというような、物語的な要素が強いような気がします。私は架空の物語を読むのが小さい頃から好きでした。物語の世界に浸った後に現実に戻ってくるとちょっと世界の見え方が変わっているような感覚。そういうものを自分でも書いてみたいと思っていたので、エッセイも小説のような物語として捉えてもらえるかなと思いながら書きました。

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第三詩集「わたしたちの猫」(ナナロク社)※試し読み

今年11月に発売された第三詩集は恋愛がテーマだそうですね。

ナナロク社から『恋愛に関する詩をウェブ上で連載してほしい』と依頼されて、2011年頃から不定期に書いてきた詩に加え、ラジオで朗読した中から恋愛寄りの詩を集め、書き下ろしも入れました。ストレートな恋愛詩だけではなく、他者との衝突や友情などの詩も入れて、緩やかに『恋』というキーワードで一つにまとめ上げたら面白いんじゃないかなと。私にとって「恋愛」は日常的なテーマではありません。ただ、他者と向き合う『私とあなた』という関係性は、恋愛において最も強く磁力が働くと思います。

第三詩集のタイトルは「わたしたちの猫」です。『人の心には一匹の猫がいて、/そのもらい手を絶えず探している。/自分で自分を飼いならすのは/ひどく難しいから、/だれもが尻尾を丸め、/人のふりして暮らしている。』という設定の表題作があって、恋愛においては『わたしとあなた』という関係性だけれど、『あなた』の中にも『わたし』と同じような猫が住んでいるかもしれない。つまり、自分とは違う存在の中に自分を見出すような、緩やかな循環をイメージしています。

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「月の三重奏」文月悠光(詩と朗読)/高山裕子(絵)/カラトユカリ(歌とギター), 2015, 葉月ホールハウス Photo:深堀瑞穂

詩人としてこれからどんな活動を行っていきたいですか?

他ジャンルとのコラボレーションはこれからも続けたくて、特に音楽の人とやっていきたいです。朗読の音源をどこかで配信したり販売していきたいという気持ちがあって、人に受け入れられやすく、カタチとして残して外に広げていくという意味ではやっぱり音楽が一番適しているし、朗読との親和性が強いので、音楽と合わさる事で魅力が増すんじゃないかと考えてます。

あとは、地元の札幌でも朗読する機会を増やしたいなと思っています。書店やアートギャラリー、カフェなどで、地元在住の音楽家の人とコラボレーションをするとか。その場でしかできない表現やコラボレーションをしていきたいです。

Text: Ayumi Yakura

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