ビョーク展

HAPPENINGText: Yuji Shinfuku

ニューヨーク近代美術館(以下、MoMA)にて6月7日まで歌手ビョークの回顧展「ビョーク」が開催されている。1993年のデビューアルバム「デビュー」に始まり、最新作「ヴァルニキュラ」まで個人名義としては8枚のアルバム、実に20年以上のキャリアを持ちアルバムごとに新たな表情を見せるビョーク。作曲を始めたのが4歳の時、12歳でアイスランド童謡を歌いレコードデビューし、ソロデビュー前にもバンド、シュガーキューブスで国際的な成功を収めている彼女の人生全てが音楽に捧げられているといってもいいであろう。

Björk
“Björk”, The Museum of Modern Art, 2015

スタイルの変遷、キャリア、また彼女のジャンルを横断する表現を考えた時に、ビョークというアーティストは回顧展をしやすいかもしれないと思う。デビューした頃はロンドン在住で先鋭的なエレクトロニックミュージシャンとアルバムを作るが、年齢とともにスタイルが変わっていき、近年は成熟されたどこか静的な広がりのある音楽へと深化し、最新作においては元夫との離婚からの再生をテーマにするなど、新たな局面を迎えている。しかしスタイルを変えながらもその世界観は一貫したものを保っているように感じる。そんな確固たるオリジナリティーを持って変化し続けるアーティスト、ビョークの表現をこの回顧展は音楽を軸にしながら多角的に考察できる機会となっている。

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“Björk”, The Museum of Modern Art, 2015

今回のビョークの回顧展は主にMoMAの2階、3階部分の一部を使って行われている。2階に上がると最新アルバム「バルニキュラ」に収録されている曲「ブラック・レイク」を映像作家のアンドリュー・トーマス・ホワンが、ビョークの祖国アイスランドにて監督した映像作品を見る事ができる。部屋はまさにこの映像作品のイントロで流れる洞窟のような雰囲気の暗室で、両極の壁には2つのスクリーンのほか、アンプが埋め込まれた行き届いたサウンドシステムの中、作品を鑑賞する事ができる。この約10分間の作品は今回の回顧展のために作られたMoMAとのコミッションワークのようである。出演者はビョークのみでアイスランドの美しい自然とのコントラストが美しい壮大でドラマティックな作品になっている。

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“Björk”, The Museum of Modern Art, 2015

次の部屋では、今までのビョークの全ミュージックビデオを座って鑑賞する事ができる。映画館のような大きなスクリーンで鑑賞できるとあって長時間滞在する来場者も多かった。ビョーク自身が現在ニューヨーク在住という事もあるが、アメリカでのビョークの人気の高さを垣間見ることができた。作品ごとに新たな世界観で我々を驚かせ魅了するビョークだが、2階では映像面に特化した彼女の表現を満喫できる。

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