文月悠光
PEOPLEText: Ayumi Yakura
「ミスiD」をはじめたのはどのようなタイミングだったのですか?
ミスiDは、候補者たちがネットに日記や自撮り写真を載せて、ファンの投票で順位を競うアイドルオーディションです。詩があまりにも世の中に知られていなさすぎるから、アイドルに寄せて詩を書き下ろしたり、朗読することによって、詩の面白さが広まるといいなと思い、大学4年の春にエントリーしました。
エントリーNo.37 文月悠光, ミスiD2014
アイドルには元々興味がありました。同世代の女の子が何を考えて、何を頑張っているのか気になるんです。例えば、AKB48の総選挙で、前田敦子が泣きながら『私の事は嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください!』と言った時に、同い年の子が、こんなに身を震わせながら言い放つ言葉ってなんて強いんだろうと。すごく単純なのですが、そういう身体性って詩人には無いものだから、アイドルに惹かれていったように思います。
詩人として活動する事と、ミスIDに出て女の子として消費される事は、矛盾しているようにも言われますけど、私が18歳で中原中也賞を取った時、ニュースサイトに『文壇に美少女現る!」みたいな煽ったタイトルを付けられて、2ちゃんねるとかでスレが立って、すごく叩かれました。写りが悪い写真を貼られたり、学校名とか本名とかまであちこちに貼られて。『もう、こういう目に合う事を前提に活動を続けていかなきゃいけないんだ』と思ってしまいました。
高校では、男子の視線があるし、あんまり野暮ったいと虐められそうで、一般の女子に馴染もうと背伸びをしていましたが、家に帰って詩を書いている時間は、唯一そういう見られ方から解放されて、女子らしくない自分を卑下しなくても良かったんです。でも、詩人として世に出たら、結局評価されるのは容姿の事や、女性として価値があるかどうかなのか、と。すごく表面的な見方だな、と思うと同時に、傷つきました。だったら、そういう見方をされてしまうという事を表明して、自分からアイドルオーディションにも出て、『良いんですよ、そういう興味の持ち方でどんどん入ってきてください』って入り口を広げた方がいいと思ったんです。
結果的に、アイドル活動をして良かったと思いますか?
良かったんですけど、「ポエドル」みたいな形で枠にはめらるのは嫌で、あちこち飛び回っていたいんです。呼んでもらえたらアイドルイベントにも出るし、アイドルに当てて歌詞を書いたりもしたいんですけど、アイドルに限らず「言葉の表現」でいろいろなジャンルの人と関わりたいという思いが強いですね。
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