文月悠光
PEOPLEText: Ayumi Yakura
アートとのコラボレーションも行っていますね。2015年に開催された「カウパレード・ニセコ」での滞在制作体験はいかがでしたか?
高校では美術部にいたので、絵を描いて色で表現したいという気持ちもあり、プロの画家さんと肩を並べてという風にはいかなくても、滞在期間を設けてもらって制作できるなんて良いなと思い参加しました。当初「牛の全身に詩を書くんだと思っていた」と言われたのですが、それをやったら怪談の「耳無し芳一」みたいになってしまうし、私は言葉で人を威圧することはしたくないんです。文字のデザインができるわけでもないので、絵に寄せていって、木漏れ日の中で牛が休んでいる姿をイメージして葉っぱを描き、制作しながら考えた詩を最後に書き入れました。
“CowParade Niseko”, Yumi Fuzuki, “Komore-bi”, Hirafu Downtown Area, 2015
ニセコで滞在制作をする中で、アーティストの人達と同じ空間で制作するので、『どういう詩を書いているのか』とか、『なぜ詩人になったのか』を他ジャンルの人に話したりする交流も面白かったです。牛が思ったより大きくて、5日の制作期間は正直ギリギリだったのですが、制作場所から見える羊蹄山の景色に癒されて、夜はすごく星空が綺麗で、自然に癒されながらの制作だったので、苦しくも楽しかったですね。
「原稿用詩」tokone
ファッションの分野だと、タイツとコラボレーションした「原稿用詩」がありますね。
知り合いが『タイツのブランドを作るから文月さんも参加してほしい』と言ってくれたんです。私ができるのは詩を書く事だから、タイツに詩が載る事を前提として考えた時に、『原稿用紙がいいんじゃないか』というアイディアがデザイナーさんから出て、それを前提に、『かかと と かかとを合わせて戦闘待機』とか、足や歩く事に関する詩を書き下ろして、レイアウトしてもらいました。
詩を着られるというのは面白いですね。
SNSで見ると、普通にお洒落として着ている人が沢山いるんです。タイツに文字だけだと詩が気になって着られないと思うんですけど、「原稿用紙」と言うフィルターがあるから、作文用紙みたいなノスタルジーを感じて『可愛い』と思う人もいるし、あまり言葉を意識し過ぎなくて済むのが程よいと思います。詩を読んでもらう以前にまずタイツとして人に履いてもらえないと意味が無いので。
詩人である事をアピールして生きていきたいという思いはあるけれど、最初から全面に押し出していくと、一般の人は引いていくじゃないですか。ツイッターとかで『私の詩を読んでください!』と言うのは簡単だけど、そう言ったところで読まれない。じゃあどうやったら読んでもらえるのか考えようと。『このタイツ可愛いな』くらいで履き始めて、『そういえばここに載っている言葉面白いな』って、二次的な情報として詩を受けとってくれたらと思っているんです。
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