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藤波佑也

PEOPLEText: Ari Matsuoka

彼が体現するコンテンポラリーダンスは、ドラマトゥルギーで何処かノスタルジーである。
ベルリンを拠点に活動する藤波佑也は、世界的に有名なコンスタンツァ・マクラス/ドーキーパークサシャ・ヴァルツから直接オファーを受けるなど、今ヨーロッパ各国から注目されるダンサーである。私が初めて彼を見たのは、今年6月にベルリンで開催された「パフォーミング・アーツ・フェスティバル・ベルリン 2019」で、初めて舞踏で心拍数が上がったことを覚えている。今回は彼のルーツを辿り、制作までの過程について語ってもらった。


Photo: Ari Matsuoka

はじめに、自己紹介をお願いいたします。

ベルリン在住のダンサーとして4年が経ちました。埼玉県で生まれ、ダンスと体操を学び、14歳でローマにダンス留学。その後、振付家・ジョン・ノイマイヤーが創立するドイツのバレエ学校を卒業。国内外問わず数多くの振付師のもとでパフォーマンスの実績を積んだ後、現在はフリーランスで活動しています。

今年6月にベルリンで開催された「パフォーミング・アーツ・フェスティバル・ベルリン 2019」での演目で、ギリシャ出身のダンサー、エマヌエラ・ドリアニティとの共同制作「E T H E R E A L」(エセ・リアル) について、テーマや制作までの経緯をお聞かせください。

memini」(メミニ) という10分の短編作品が共同制作の始まりなのですが、二人で60分の長い章を作ろうと制作したものが本作です。
“夢”をテーマとして、眠るときに見る夢と、小さい頃になりたかった夢の2つの視点から記憶を辿るように物語は展開していくのですが、僕は自分自身の個体として、エマヌエラは僕の中に存在するメモリーを体現しています。
夢は時として、小学生や思春期を抜けて今のように大人になっても、思考ばかりが先回りしてしまい、自分自身では制御できなくなったり、感情をコントロールできなくなることがあります。踊りの中で、初めは僕の体を振り解き暴走する「なにか」に戸惑い、力任せに抑えて閉じ込める様子から、自分の過去の夢の中へ辿り着き、エマヌエラの演じるメモリーと向き合うことで、徐々に本来あるべき自分の姿へと還っていく…というストーリーになってます。
最後の10分間はストーリーの中で僕たちにとって最も激しいダンスとなるのですが、それは前作で制作したパフォーマンスに連結していきます。今まで制作してきたものに愛着があったので、ドラマのシナリオとして前作が終盤で繋がっていく方が美しいと感じたからです。観客側も3作品を通して「気付き」になったり、物語の伏線を辿っていく面白さの部分にも興味を持っていただけたらなと思って作りました。
実は、60分の完全版として本作を制作し始めたのが、2018年2月頃だったのですが、ワークインプログレスとして試験的にお客様の前にパフォーマンスをし終えた後で僕が膝を負傷してしまい、1年間完全に踊れなくなってしまった期間がありました。怪我の治療中、リハビリも兼ねてヒッチハイクでギリシャ、アルバニア、コソボへ一人旅をしながら現地の音楽に触れたり、その街独自の文化に触れたことが僕にとっても素晴らしい経験となり、今のスタイルに繋がっています。


E T H E R E A L Trailer

振付やストーリーを考える上で音楽は密接な関係があると思いますか?

それはとても感じます。「エセ・リアル」に関しては、舞台音響家でもありアーティストのステファノ・チャルディにストーリーやコンセプトを伝えた上で制作していただきました。彼とは以前より仲の良い友人関係ですが、音楽においては完成の時点でほぼ理想通りに再現してくれるので、彼の思考と僕の思考はとても似ているのだと思います。舞台音響は全て録音されたものを使うのではなく、ある意味即興で演奏する場面もあるので、音源としては記録していますが、実際に現場の空気感があってこそ、彼の作る音楽が映えるのだと思っています。

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