あなたの肖像-工藤哲巳回顧展

HAPPENINGText: Valerie Douniaux

大阪の国立国際美術館は日本人アーティスト、工藤哲巳(1935−1990)の回顧展を開催した。工藤哲巳の作品は原子力の有害な影響や機械による人間関係の疎遠化の影響などを提示している。まさに現代日本の深刻な現実の課題である。

あなたの肖像-工藤哲巳回顧展
工藤哲巳 1971年 撮影:工藤弘子 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

美術教師の両親のもとに生まれた工藤哲巳は東京藝術大学で学ぶ。後に美術家として名評をうけた工藤氏は同大学で教員になっている。彼は「反芸術」世代の代表格であり、「反芸術」のアイディア自体も彼の作品の一つを参考に生まれた様にうかがえる。「反芸術」は1950年代に主流だった伝統的な芸術や美学の概念を拒絶し、その活動は戦争直後の時代に育った若者が、政治的、そして社会的な問題にかかわる事の大切さを表している様にも感じる。「あなたの肖像ー工藤哲巳回顧展」と同時開催した展覧会「コレクション3『あなたの肖像-工藤哲巳回顧展』にちなんで-1960年代の『反芸術』から、今日の美術まで」では、「反芸術」にかかわった、他アーティストによる作品も展示し、彼のご家族の協力で借りることのできた興味深い資料も紹介されていた。

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工藤哲巳《あなたの肖像》1963年 高松市美術館蔵 撮影:高橋章 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

1960年、工藤氏は「インポ哲学」の制作を開始し、これがこの後の彼の制作において重要な意味をもつ思想となっていく。彼は作品を通して日本の保守主義への非難をはじめ、人間と破壊力をもつ産業との関係性の欠如を非難した。1962年に日本を離れ、そこでいくつかの毒性が強いパフォーマンスを披露したのだが、この展覧会にてその記録映像を観る事が可能だ。フランスの美術評論家は彼のことをアートと現実の関係、また旧来の芸術制作の手法の廃退を問う「オブジェクトゥール=異議を唱える人/オブジェをつくる人」と評している。

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工藤哲巳《あなたの肖像’67》1967年 青森県立美術館蔵 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

工藤氏は自身を現代社会の立会人、そして分析者ととらえ、自身の作品をメッセージを伝える媒体、コミュニケーションツールとして考えた。また原子力や環境汚染、人間の生存にかかわる根本的な問題に対抗するものとして生態学にも興味を持ち、性的タブーや西洋による誤ったヒューマニズムに警鐘を鳴らした。頻繁に死(アートにおいての)と破壊を表現しながらも、彼は悲観主義に自身を落とし込む事はせず、新しいエコロジーやヒューマニズムといったものに希望を見出したとも言える。

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工藤哲巳《あなたの肖像―種馬の自由》1973年 米津画廊蔵 撮影:福永一夫 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

常に強い反応を求めた彼は、見ている者を作品や思想にダイレクトに引き込んでいった。展覧会のタイトルともなっている作品タイトル「あなたの肖像」がこの願望を表現している。人間が箱や鳥かごに閉じ込められたものなどを含む、彼の象徴的作品とも言われるこれらの作品は、痛ましく、同時に恐ろしげでありながらも、常によい具合にブラックジョークが効いている。彼の作品におけるユーモアは、作品を完全に否定的なものとはせず、不穏な雰囲気の中にもどこか友好的な感覚を持たせる要素と言えよう。別の展示室では、泣き声を発したもの、ベビーカーに乗せられたもの、デッキチェアの上で溶けているようにも見えるものなど、不気味な繭あるいは器官の一部のような物体が展示されていた。彼がアルコール依存症から回復した後の晩年の作品は、他の年代と比べ少し明るい作風が感じ取れ、題材は重いままであっても、成熟と落ち着きを持った作品になっていた。

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工藤哲巳《人間とトランジスタとの共生》1980-81 年 国立国際美術館蔵 撮影:福永一夫 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

2011年に日本が体験した震災、そして今も続く出来事は、工藤氏が数十年前にあげた疑問の大切さを思い起こさせるものであり、わたしたちに再度このユニークなアーティストを評価させる事となった。引き続き東京国立近代美術館と青森県立美術館で開催されるこの展覧会は、アーティスト工藤哲巳に対するオマージュである。

あなたの肖像-工藤哲巳回顧展
会期:2013年11月2日〜2014年1月19日
時間:10:00〜17:00(金曜19:00まで、月曜休館)
会場:国立国際美術館
住所:4-2-55 Nakanoshima, kita-ku, Osaka
TEL:+81-6-6447-4680
http://www.tetsumi-kudo-ex.com

巡回展
2014年2月4日〜3月30日 東京国立近代美術館
2014年4月12日〜6月8日 青森県立美術館

Text: Valerie Douniaux
Translation: Meiko Maruyama
Photos: © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013 All Rights Reserved.

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