工藤哲巳回顧展「あなたの肖像」

HAPPENINGText: Valerie Douniaux

大阪の国立国際美術館で、工藤哲巳(1935−1990年)の回顧展が2013年11月2日から2014年1月19日にかけて開催された。工藤哲巳の作品は原子力の有害な影響や機械による人間関係の疎遠化の影響などをテーマにしており、まさに現代日本の深刻な現実の課題を示唆している。

あなたの肖像-工藤哲巳回顧展
工藤哲巳 1971年 撮影:工藤弘子 © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

美術教師の両親のもとに生まれた工藤哲巳は東京藝術大学で学ぶ。後に美術家として名評をうけた工藤は同大学で教員になっている。彼は「反芸術」世代の代表格であり、「反芸術」のアイディア自体も彼の作品の一つを参考に生まれた様にうかがえる。「反芸術」は1950年代に主流だった伝統的な芸術や美学の概念を拒絶し、その活動は戦争直後の時代に育った若者が、政治的、そして社会的な問題にかかわる事の大切さを表している様にも感じる。

「あなたの肖像ー工藤哲巳回顧展」と同時開催した展覧会「コレクション3『あなたの肖像-工藤哲巳回顧展』にちなんで-1960年代の『反芸術』から、今日の美術まで」では、「反芸術」にかかわった、他アーティストによる作品も展示し、彼のご家族の協力で借りることのできた興味深い資料も紹介されていた。

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工藤哲巳《あなたの肖像》1963年 高松市美術館蔵 撮影:高橋章 © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

1960年、工藤は「インポ哲学」の制作を開始し、これがこの後の彼の制作において重要な意味をもつ思想となっていく。彼は作品を通して日本の保守主義への非難をはじめ、人間と破壊力をもつ産業との関係性の欠如を非難した。1962年に日本を離れ、そこでいくつかの毒性が強いパフォーマンスを披露したのだが、この展覧会にてその記録映像を観る事が可能だ。フランスの美術評論家は彼のことをアートと現実の関係、また旧来の芸術制作の手法の廃退を問う「オブジェクトゥール=異議を唱える人/オブジェをつくる人」と評している。

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