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工藤哲巳回顧展「あなたの肖像」

HAPPENINGText: Valerie Douniaux

工藤は自身を現代社会の立会人、そして分析者ととらえ、自身の作品をメッセージを伝える媒体、コミュニケーションツールとして考えた。また原子力や環境汚染、人間の生存にかかわる根本的な問題に対抗するものとして生態学にも興味を持ち、性的タブーや西洋による誤ったヒューマニズムに警鐘を鳴らした。頻繁に死(アートにおいての)と破壊を表現しながらも、彼は悲観主義に自身を落とし込む事はせず、新しいエコロジーやヒューマニズムといったものに希望を見出したとも言える。

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工藤哲巳《あなたの肖像’67》1967年 青森県立美術館蔵 © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

常に強い反応を求めた彼は、見ている者を作品や思想にダイレクトに引き込んでいった。展覧会のタイトルともなっている作品タイトル「あなたの肖像」がこの願望を表現している。人間が箱や鳥かごに閉じ込められたものなどを含む、彼の象徴的作品とも言われるこれらの作品は、痛ましく、同時に恐ろしげでありながらも、常によい具合にブラックジョークが効いている。彼の作品におけるユーモアは、作品を完全に否定的なものとはせず、不穏な雰囲気の中にもどこか友好的な感覚を持たせる要素と言えよう。

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工藤哲巳《あなたの肖像―種馬の自由》1973年 米津画廊蔵 撮影:福永一夫 © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

別の展示室では、泣き声を発したもの、ベビーカーに乗せられたもの、デッキチェアの上で溶けているようにも見えるものなど、不気味な繭あるいは器官の一部のような物体が展示されていた。彼がアルコール依存症から回復した後の晩年の作品は、他の年代と比べ少し明るい作風が感じ取れ、題材は重いままであっても、成熟と落ち着きを持った作品になっていた。

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工藤哲巳《人間とトランジスタとの共生》1980-81 年 国立国際美術館蔵 撮影:福永一夫 © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

2011年に日本が体験した震災、そして今も続く出来事は、工藤が数十年前にあげた疑問の大切さを思い起こさせるものであり、わたしたちに再度このユニークなアーティストを評価させる事となった。引き続き東京国立近代美術館と青森県立美術館で巡回されるこの展覧会は、アーティスト工藤哲巳に対するオマージュである。

あなたの肖像-工藤哲巳回顧展
会期:2013年11月2日(土)〜2014年1月19日(日)
時間:10:00〜17:00(金曜19:00まで)
休館日:月曜日
会場:国立国際美術館
住所:大阪市北区中之島4-2-55
TEL:06-6447-4680
https://www.tetsumi-kudo-ex.com

Text: Valerie Douniaux
Translation: Meiko Maruyama
Photos: © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013

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