ダブルフライ・アートセンター

PEOPLEText: Hiromi Nomoto

中国のアーティストグループは数多くあるが、ダブルフライ・アートセンターのようなグループは珍しい。アートであろうとなかろうと関係ない。彼らは全力でイタズラをする。

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『ダブルフライ・ブランド特許』/ 写真 / 2010

ダブルフライ・アートセンター(双飛芸術中心、以後ダブルフライ)とは、中国で活躍するアーティストグループのことだ。2008年に中国美術学院新メディア科(現クロスメディア科)を卒業した、ツイ・シャオハン(崔紹翰)、ホワン・リーヤー(黄麗芽)、リー・フーチュン(李富春)、リー・ミン(李明)、リン・クー(林科)、スン・フイユエン(孫慧源)、ワン・リャン(王亮)、ヤン・ジュンリン(楊俊嶺)、ジャン・ルーホワ(張楽華)の9人からなる。展示会場で彼らの作品を見かけるたびに、気になる存在となった。ダブルフライの1人であるジャン・ルーホワに話を聞いた。

ダブルフライはどのようにして結成したのですか?

私たちは大学を卒業してから、いつも一緒に遊んでいました。大学では1クラスに50人いましたが、卒業後に会社で働く人もいて、最終的に一緒に遊んでいたのが彼らです。そのメンバーで展示をすることにしました。当時、私たちは杭州にいて、大きな家に4、5人で共同生活していました。その後私は上海に戻りましたが、杭州に行ってよく遊んでいます。それから自分たちを「ダブルフライ・アートセンター」と呼んで、いろいろなことをしました。一緒に遊んで、それを撮影し、作品にしました。

私たちはみんなそれぞれが独立したアーティストです。実際のところ、グループや団体をつくる必要は特にありません。しかし、私たちは一緒にいて何かをします。自然なことで、何も考えていません。ただ存在しているのです。

“ダブルフライ”とはどういう意味ですか?

“ダブルフライ(双飛)”という言葉には、2羽の鳥が一緒に飛ぶという素晴らしい意味があります。それを人に置き換えると、3人か4人が一緒にセックスするという意味です。

『ダブルフライ銀行強盗』/ 映像 / 2009

ダブルフライのコンセプトをお聞かせ下さい。

私たちは作品の展示をする必要はないと思っています。つまり、あまりに安全な作品は絶対につくりたくありません。安全じゃない展示をどうやってつくったらいいのかは分かりませんが。

私たちが外に出て遊ぶと、面白いことおかしなことが起こります。それを映像に撮り始めました。このことを通して、作品をつくるのに新しい考えを得ています。

メンバーはどんな人たちなのですか?あなたはとても真面目な印象を受けます。

そんなことはありません。メンバーみんなが真面目です。真面目な態度で物事に向かっています。しかしみんなが一緒になると、真面目ではないことをします。人には2つの顔が必要です。あるときは真面目に取り組み、あるときは筋の通らないことをします。

映像作品を見たとき、どんな人たちなのだろうと思いました。楽しそうで、とても開放的です。いつもこんな感じなのかと思っていました。

違います。普段はああではありません。でも一緒にいるときは、あんな感じです。いつもはみんな小心者で、恐がりなのです。

メンバーが集まったときは、作品について話すのですか?

基本的に私たちはしゃべって、食べて、遊びに行って、踊って、歌を歌う。作品のことだけを真面目にしているわけではありません。個人の制作のときに真面目にしていますから。ダブルフライのときは、たまに作品について話し合うこともありますが、それほど重々しく話しません。全ては楽しんでいるときに、起こります。

『白痴ホワイトカラー』/ 映像 / 2009

あなたたちの作品を見た人はおそらく、笑ってしまうでしょう。なぜなら『スパイダーマン』では道端の人に水をかけ、『夜、動物園へ行く』や『ホワイトカラー』では警備員や警察に注意されています。他にもいろいろとやってしまっています。あれは、本当にそうしているのですか?

本当です。動物園は、私たちは食べて飲んで、遅くなり、「見て、12時だ。お腹一杯だな。何しようか?」。何もすることはなくて、仕事もありません。「山を登ろう」「よし、登ろう」。山を登っても面白くないので、動物園に行くことになりました。杭州の動物園は山の上にあります。門は閉まっていたので、私たちは鉄門を開けて入りました。誰にも見つけられなかったけれど、その後見つかってしまいました。

作品には“イタズラ”の要素がかなりありますが、撮影後に怒られたりしませんか?

怒るなら怒ればいい。私は怒られても問題無いと思います。彼らに怒らせればいい。

『リミテッド・ポロック』 / 映像 / 2009

作品「リミテッド・ポロック」では、路上でジャクソン・ポロックのような方法で、作品をつくりました。これをもし他の国でやったら警察が来るかもしれません。

ポロックのとき、そこに映っている場所の人は怒りました。運搬用の三輪車に絵の具をかけてしまったので、あとで買い取りました。だから問題ありません。大丈夫。警察は「何も問題無い。小さい事だ。」とだけ。私たちがしていることは、作品になってみるとその効果はありますが、実際には小さいことです。人を殴っているわけでもなく、それほど重大なことはしていません。私たちは肝の小さい人間なのです。

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『ダブルフライ・ブランド特許』/ 写真 / 2010

2010年に上海で行われたゲット・イット・ラウダーでのダブルフライの出展作品は『ダブルフライ・ブランド特許』です。この作品はさまざまな有名ブランドのイメージでメンバーを写真におさめたものです。この作品について教えて下さい。

良い服を着たい。しかし金がありません。そこで、ネットで100人民元程の安い服を買い、それを着て、CMフォトグラファーに撮影してもらいました。まるで広告のように。それにロゴを付け足しまして、いい服を着たいという欲を満たしました。

『コンテンポラリー・ビジネス』/ 映像 / 2010

2010年の大声展では、他に『コンテンポラリー・ビジネス』という映像作品がありました。ミュージックビデオ仕立てになっていますね。

あれはみんなが好きな作品です。『コンテンポラリー・ビジネス』をつくったのは、なぜならあのとき、私たちはあることに対して不満でした。若手アーティストなので、ある所に振り回されていました。彼らに作品が必要だと言われて、私たちは制作しました。その後展示はなくなり、作品は不要になってしまいました。作品の中で「もうどうでもいい。展示やらないんだったら、やらないでいいよ!」と歌っています。

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上海コンテンポラリー・アートフェア2011 特別プロジェクト 撮影:Hiromi Nomoto

上海コンテンポラリー・アートフェア2011の際に、さまざまなギャラリーが並んでいる中に、ダブルフライも出展していましたね。中央に新築マンションの模型がありました。

私たちは上海コンテンポラリー・アートフェアの会場で、不動産会社にスペースを与え、壁に私たちの絵をかけました。もし不動産会社が契約を成立し家を売ったならば、私たちは住宅購入者に作品を贈ります。私たちの作品はプレゼントです。

ダブルフライがそれ以前にしていた活動では、めちゃくちゃな演技をしたりしていました。しかしその展示のときは違います。これからの私たちは恐らく、身体を使わずに表現するでしょう。私たちもどんどん年齢をとっていきます。いつまでも服を脱いでいるわけにはいきません。

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『2階に住む』/ ダブルフライ / ミクストメディア / 2011 撮影:Hiromi Nomoto

では、あなたたちはこれからどんなことをするつもりですか?

私たちはそれぞれ個人でも制作しています。ここ1、2年は、その個人の作品の要素を取り出し、みんなとシェアできることを願っています。例えば私がこのコップをいつも使って作品をつくるとします。このコップを取り出し、9人みんなでこのコップのようなものをつくります。1人1人がつくるコップは違います。私ジャン・ルーホア“プラス”ダブルフライというような概念に変わります。

もしかしたら展示ではないかもしれません。もし絵画ならば展示をするかもしれないし、音楽ならばライブをするかもしれない。他にも、演劇をすることもあるかもしれません。私たちはいろんなことができます。

《ダブルフライ・パレス》/ 映像 / 2010 北京の798アートエリアで行われた

楽しそうに“イタズラ”を創作している彼らだが、近頃では多くの展示に招待されたり、個展を行っている。それらを紹介しよう。2011年の北京の工人体育館西側にあるギャラリー・ホテルタン・コンテンポラリー・アートの共同アートプロジェクトに参加。作品を設置するだけのアーティストもいたが、ダブルフライのメンバーたちは、ギャラリー・ホテルに滞在し作品をつくった。その様子は彼らのウェイボー(中国のマイクロブログ)上で紹介していた。相変わらずめちゃくちゃな様子で、映像は既に消されてしまった。バスタブに大量の牛乳を張り、肌の張りと美白効果を狙った「牛乳純愛」風呂は、一晩5万中国元という豪華な部屋にはまさにぴったりだ。

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ギャラリー・ホテル・アート・プロジェクトの様子

中国の若手アーティスト90名以上を集め、中中央美術学院美術館で行われた巨大グループ展示「未来展」へも参加した。中国の重要なアーティストの1人で中央美術学院校長でもあるシュー・ビンとグッゲンハイム美術館のシニアキュレーターのアレクサンドラ・モンロー、中国屈指のキュレーターで美術評論家のフォン・ボーイーらがキュレーション委員を務めた。アーティストの選出は、大声展のキュレーションを行った若きキュレーターのフー・シャオドンら、アーティストや美術大学教授、美術館館長など80名で行われた。多くの作品の中でもダブルフライは浮いた存在で、この展示の講演会に参加した森ミュージアム館長の南條氏は「これほどまでに意味をなさない作品は、若くなければつくり出せないだろう。私はこれらの中で彼らの作品を一番に推薦する」と語った。

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『Double-Fly, The Way to Go!—Sounds like a Real Name』の展示風景 撮影:Hiromi Nomoto

2012年末から2013年初めにかけての展示『Double-Fly, The Way to Go!—Sounds like a Real Name』では、来場者は168元を払うとクジを1枚引け、少なくとも作品1点が当たる。中には10点も貰えるくじや、3回引く権利が貰えるくじ、100元更にプラスすると額装した作品を貰うことができるなどだ。ダブルフライらしい展示である。ゲーム的要素のある展示だが、展示会場ではメンバーたちは真剣な表情で、オープニングに集まった人々の様子を伺っていた。

彼らの作品は、他のどんなアーティストたちとのグループ展でも、馴染んで調和などできずにいつも浮いている。言葉で彼らの作品をどう表現していいのかは分からない。彼らの作品は地球を救ったりはしないし、社会問題を扱っている訳でも、何でもない。一見するとお笑い作品、ほとんど只のイタズラで、もしかしたら作者がアーティストであるということ以外アートとは関係が無いのかもしれない。私にとっての彼らの作品の魅力とは、そういったところにある。何の脈絡も無く思われる彼らの作品も実は、これら中国アートの流れの中で重要な存在なのだろう。しかし彼らの作品は、あれこれと頭で考えるよりも先に、何故か人々に受け入れられてしまうのだ。

私はダブルフライが思考の重点を置いた作品に移行していくのは、少し寂しく感じられます。

そうかもしれませんね。ですが、ダブルフライがとても真面目になって、そのせいでものすごく寂しい感じになったとしたら、それは結構面白いかもしれません。そうでしょ?

Text: Hiromi Nomoto
Photos: Double Fly Art Center, Hiromi Nomoto

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