ミート・ビート・マニフェスト
PEOPLEText: Anthony Augendre
「ミート・ビート・マニフェスト」の存在なくしてプロディジーやケミカル・ブラザーズなどがもたらしたビッグ・ビートは生まれ得なかったという事実に誰もが気付く日も遠くはないはずだ。彼らはミート・ビートのジャック・ダンガーズの才能に敬意を表し、フレーズをサンプルしたりインタビューに引用をしたりしている。
誰よりも以前からミート・ビート・マニフェストはヒップ・ホップと実験音楽、エレクトロとコンクリート・ミュージック、テクノとインダストリアルの融合を精力的に推し進めてきた。彼はおそらく世界最初の「インテリジェント・ダンス」のプロデューサーでありカールハインツ・シュトックハウゼンやパブリック・エネミーの突然変異に違いない。この比類なきレコード・コレクターでもあるジャックに様々な“歴史的”曲を聴いてもらい感想を述べてもらいながらインタビューを試みた。
では、まずCANの「アイ・ウォント・モア」はどうです?
キャバレー・ヴォルテールやクラフトワークにのめり込んだのは「CAN」のおかげさ。それが最初に実験的な音楽の世界へ入ったきっかけだった。この辺のバンドのおかげで、彼らがまたどんなバンドや音楽に影響を受けていたかを知ったんだ。彼らはシュトックハウゼンなんかに大きな影響を受けていたんだ。
ミート・ビートの音楽には何かクラフトワークに通じる要素があると思いますが。アシッド系のメロディーと催眠術にかかってしまうようなグルーブです。
あぁ、そうだね。僕の一番新しいアルバムの最後の曲は彼らへのオマージュになってるよ。最近、彼らのツアーに行ったんだけど、本当に良かった。けど最近の曲を取り入れていたんだ。それが今ひとつだったんだ。だから自分で曲をつくって自分に言い聞かせたんだ、“これがクラフトワークが演るべき音だ”ってね。
キャバレー・ヴォルテールの「デジタル・ラスタ」はどうです?
1981年に、クリス・ワトソンがバンドを去ったときに、解散させたんだ。「ヴォイス・オブ・アメリカ」は良いアルバムだよ、それに最初のシングル「ミックス・アップ」もね。とても80年代らしいサウンドだけど、クラフトワークや初期のキャバレー・ヴォルテールは時代を超えている。でもこれは違うね。80年代ドラムマシンの名機「LinnDrum」を使っているんだけど、これは僕には使い勝手が悪かった。LinnDrumを使う前のヒューマン・リーグのデビューアルバムは好きだよ。
オービタルは?オービタルによるミート・ビートのリミックスで、彼らのアルバムにも入っていますね。
そうだね。最初にリミックスをやったのは彼らだね。彼らから電話がきて、使いたいと言ってきたんだよ。みんなこの曲を知っているけど、オリジナルである僕らの曲を知らないんだよね。
コンソリデーテッドの「シェル」は?
この声知ってるよ(笑)。アダムだね。2、3度聞いたことがあるんだけど、新しいアルバムは初期のものと違って、好きじゃないんだ。マービン・ゲイのようなアメリカのソウルミュージックの影響を受けているんだけど、なかなか良いんじゃないかな。
コンソリデーテッドとは長いこと一緒に仕事を?
アシスタント・プロデューサーとしてクレジットされているだけだけど、「フレンドリー・ファシズム」ではベースラインやビートのほうを作ったよ。まあクレジットはたいした問題じゃないけどね。サンプリングも担当した。
彼らの政治的なアプローチについてはどう思います?厳格なベジタリアンでファシズムや性差別と闘っているというのは?
そうだね、だけど最近は現実と少し乖離しているんじゃないかな。僕は肉、魚、チーズ、卵、ミルクを口にしないけどあまり声高に言う事じゃないと思う。個人の選択の問題だよ。
クララ・ロックモアの「ストラヴィンスキー」。
クララ!このレコード持ってるよ。オリジナルの7インチレコードで、テルミンの音が入ってるんだ。僕も1台大きなテルミンを買ったよ。
Text: Anthony Augendre
Translation: Satoru Tanno